何か適当に数学する3
Minkowski inequality
今回は\(\ell^p\)版三角不等式Minkowskiの不等式を示しますが,この形のものは非常に特別な形で実際はもっと一般化できることは少しコメントしておきます.
まぁ,それはまたその時が来たらでいいのでとりあえず次を示しましょう.
proof
証明ですが,まず,\(p=1\)の時はただの三角不等式になってしまいますので,それは除きます.
また,左辺が\(0\)の場合も明らかですので,これらすべてを除いた時のみを考えれば十分です.
まず,\(x^p\)の凸性を用います.すなわち,\(a,b>0\)とするとき,
\[\Bigl(\frac{a+b}{2}\Bigr)^p\leq \frac{a^p+b^p}{2}\]
が成り立ちます.従って, \[\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i+y_i\mid^p\leq 2^{p-1}\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p+\sum_{i=1}^{\infty}\mid y_i\mid^p\Bigr)<\infty\]
となって,前半の主張である,\(x+y\in\ell^p\)はわかります.
ところで,
\[\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i+y_i\mid^p=\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i+y_i\mid\mid x_i+y_i\mid^{p-1}\leq\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid\mid x_i+y_i\mid^{p-1}+\sum_{i=1}^{\infty}\mid y_i\mid\mid x_i+y_i\mid^{p-1}\] なので,
Hölderの不等式から,\(\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1\)を満たす,正の数\(q\)に対して, \[\leq\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i+y_i\mid^{q(p-1)}\Bigr)^{\frac{1}{q}}+\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid y_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i+y_i\mid^{q(p-1)}\Bigr)^{\frac{1}{q}}\]
\(q(p-1)=p\)に注意すれば, \[=\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i+y_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{q}}\Bigl[\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}+\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\Bigr]\]
従って,両辺に \[\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i+y_i\mid^p\Bigr)^{-\frac{1}{q}}\] をかければ,結論の不等式が得られます. \(\Box\)
とまぁ,証明はこんな感じで終わります.
Hölderの不等式の使い方が中々強引ですが,やってること自体はただ脳筋で上から抑えただけですね.
でさっきも言いましたが,この不等式実はもっともっと一般化できて,最終的には測度に関する二重積分の形でかけるらしいです.
まぁ其の辺はまた使う機会があったらということにして,次回は\(\ell^p\)について考えていきましょう.
といったところで今日は終わります.読んでいただきありがとうございました.
間違い等がございましたら,コメントかTwitterにて指摘してくださると幸いです.
なんか適当に数学する2
Hölder's inequality
今回から\(\ell^p\)について具体的に調べていこうと思います.
今回はMinkowskiの不等式に利用する Hölderの不等式についてみていきましょう.
proof
証明はまず以下の不等式を示します\(\colon\)
\[ab\leq\frac{a^p}{p}+\frac{b^q}{q}\ \ (a,b> 0)\tag{1}\]
この証明は簡単で,\(t\geq 0\)として, \[\phi(t)=\frac{t^p}{p}-t+\frac{1}{q}\] と定義すると,微分して増減を調べれば,この関数は\(t=1\)で最小値\(0\)をとり,それ以降は増加し続けます.
従って,\(t\geq 0\)ならば,\[\frac{t^p}{p}+\frac{1}{q}\geq t\] が得られ,\(a,\ b>0\)として,\(t=\frac{a}{b^{q-1}}\)とすれば\[\frac{a}{b^{q-1}}\leq\frac{1}{p}\frac{a^p}{b^{p(q-1)}}+\frac{1}{q}\]
\(p(q-1)=q\)に注意すると,両辺に\(b^q\)をかければ,(1)の不等式が得られます.
ここで,結論の不等式は,\(x,y\)のどちらか一方でも\(0\)になってしまうと明らかに両辺が0です.
また結論の右辺の\(y_i\)についての和が正の無限大に発散してしまう場合は明らかなので,そうでないとします.
このとき,各\(i\in\mathbb{N}\)に対して, \[a_i=\frac{\mid x_i\mid}{\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}},\ b_i=\frac{\mid y_i\mid}{\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid y_i\mid^q\Bigr)^{\frac{1}{q}}}\]
とおけば,(1)の不等式より,\[\frac{\mid x_iy_i\mid}{\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid y_i\mid^q\Bigr)^{\frac{1}{q}}}\leq\frac{\mid x_i\mid^p}{\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\Bigr)}+\frac{\mid y_i\mid^q}{\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid y_i\mid^q\Bigr)}\]
となって,両辺をiに関して和を取ると,\[\frac{\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_iy_i\mid}{\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid y_i\mid^q\Bigr)^{\frac{1}{q}}}\leq \frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1\] となって,両辺に左辺の分母をかければ結論が得られます. \(\Box\)
中々定数がややこしかったりしましたが,比較的無難に示せたと思います.といったところで今回はこれで終わりで,次回はMinkowskiの不等式を示します.
間違い等がございましたらコメントかTwitterにて指摘していただけると幸いです.
なんか適当に数学する
\(\ell^p\)について適当に
とりあえず,思いついたことをかいていけばいいかなぁと思いつつやります.
この\(\ell^p\)は基本的な和とスカラー倍に関して,\(\mathbb{C}\)ベクトル空間となります.
(各\(n\)での和とスカラー倍ってやつですね)
実はこの空間においては和について閉じているかどうかは意外と自明ではないですが,次の不等式によってそれが正当化されます:
といってみたものの,証明をやったことがある人ならわかると思いますが,\(x^p\)の凸性を使うだけで実は\(x+y\in\ell^p\)は言えてしまいます.
が,結局これは示さなきゃいけない事実だったりします.それは次のように定義されたものがノルムだと示さなければいけないからです.
ノルムの定義において,三角不等式を満足しなければいけませんが,このノルムの形から三角不等式はMinkowskiの不等式そのものなので,結局示す必要があるわけです.
で,結局このノルムに関して\(\ell^p\)は完備となるので,Banach空間であることがわかります.次回からはとりあえずこれを目標にちょこっとずつ書いていこうかなぁと思います.
間違え等がございましたらコメントかTwitterで指摘してくださると助かります.
テスト
-テスト-
proof
証明は容易であるので読者の演習課題とする.\(\Box\)