数学メモ帳

なんかとりあえず数学する

掛け算作用素の話をしたかった その3

前回は掛け算作用素を定義しました.

Review\(|F(x)|\)がa.e有限な\(\mathbb{R}^N\)上のボレル可測関数\(F\)とする.このとき,\(L(\mathbb{R}^N)\)から自身への線形作用素\(M_F\)を\[\forall f\in L^2(\mathbb{R}^N),(M_Ff)(x)=F(x)f(x)\ a.e.x\]と定義する.ただし,\(F\)が\(\exists M>0;\ \sup|F(x)|\leq M\ a.e\)ならば,\(D(M_F)=L^2(\mathbb{R}^N)\),そうでないならば\(D(M_F)=\{f\ ;\|Ff\|_L^2<\infty\}\)とする.

そしてこの掛け算作用素の関数\(F\)が本質的に有界であるときは,\(M_F\in\mathbb{B}(L^2(\mathbb{R^N}),L^2(\mathbb{R^N}))\)となることをみました.

従って,今回は\(F\)が本質的に有界でない場合にどのような性質があるかについて述べます.

今回は測度論を割と使うので,まぁその辺の議論が好きかそうでもないかでだいぶ面白さは変わってくるとは思います.

では早速ですが、やっていきましょう.

propsition\(F\)が本質的に有界でないとき,次が成り立つ:
    \((1)\ D(M_F)\neq L^2(\mathbb{R}^N)\).
    \((2)\ M_F\)はdensely definedな線形作用素.

Proof

証明ですが,(1)がほとんど全てです.これが結構長いのでまぁ頑張りましょう.

要するに\(D(M_F)\)にはない関数が見つかれば良いわけですが,現実にはそれを構成しなければならないので、まず任意の自然数\(n\)に対して,

\[S_n=\{x\in\mathbb{R}^N\ ; n\leq\mid F(x)\mid < n+1\}\]と定義します.

これは異なる二つの自然数\(i,j\)に対して,\(S_i\neq S_j\)です.

さて,今\(F\)がa.e有限であることから, \[\mu(\cap_{n\in\mathbb{N}}S_n^c)=0\]となります.

実際\(S_n^c=\Omega(\mid F\mid<n)\cup\Omega(\mid F\mid\geq n+1)\)であるから,

\[\cap_{n\in\mathbb{N}}S_n^c=\Omega(\mid F\mid =\infty)\]

となり,a.e有限から,上の式がでます.

さて,ここから,\(\mu(\cup_{h\in\mathbb{N}}S_n)=\sum_{n=1}^{\infty}\mu(S_n)>0\) となります.

よって、今\(F\)が本質的に有界でないので、\(\mu(S_n)>0\)なる自然数\(n\)は無限個存在します.(ただし、無限大に発散する場合も含む)

なぜならば、有限個しか存在しないと仮定すると,その自然数の最大値\(M\)をとれば,\(M\)が\(F\)の本質的上界になってしまうからです.

よってこのような自然数の列を\(\{n(k)\}_{k\in\mathbb{N}}\)としておきます.

さて、上の測度はまだ発散する場合があるので、ここで有限値に収まるように工夫をします.

\(\mathbb{R}^N\)はσ-有限である,すなわち

\[\forall m\in\mathbb{N},0<\mu(K_m)<\infty,\bigcup_{m\in\mathbb{N}}K_m=\mathbb{R}^N\]となる\(\{K_m\}\)が存在します.

今,\[\mu(S_{n(k)})=\mu(\bigcup_{m\in\mathbb{N}}K_m\cap S_{n(k)})\]であるので、任意の\(k\)に対して,\(\mu(S_{n(k)}\cap K_{m(k)})>0\)なる自然数\(m(k)\)が存在します.

ここで,関数\(g\)を次のように定義します:

\[\begin{equation} g(x)= \left \{ \begin{array}{l} \Bigl(n(k)\sqrt{\mu(S_{n(k)}\cap K_{m(k)})}\Bigr)^{-1}\  (\forall k,\ x\in S_{n(k)}\cap K_{m(k)}) \\ 0 ({\rm Otherwise)} \end{array} \right. \end{equation}\]

このとき,\[\|g\|_{L^2}^2=\sum_{k=1}^{\infty}\int_{S_{n(k)}\cap K_{m(k)}}\mid g(x)\mid^2\ dx=\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{n(k)^2}\leq\zeta(2)=\frac{\pi^2}{6}<\infty\]

というガバガバ評価により,\(L^2\)の元であることがわかります.その一方で,

\[\|M_Fg\|_{L^2}^2=\int_{\cup_{k=1}^MS_{n(k)}\cap K_{m(k)}}\mid F(x)g(x)\mid^2\ dx\leq\int_{\cup_{k=1}^MS_{n(k)}\cap K_{m(k)}}\mid|n(k)\mid^2\mid g(x)\mid^2\ dx=\sum_{k=1}^Mn(k)^2\times\frac{1}{n(k)^2}=M\to \infty\ (as\ M\to \infty)\]

従って,(1)が示されました.

次に(2)を示します.まず,\(D_M=\cup_{n=1}^MS_n\)とおき,\(\forall f\in L^2(\mathbb{R}^N)\)に対して,\[f_M(x)=I_{D_M}(x)f(x)\]とします.ただし,\(I_A\)は\(A\)の定義関数を表します.

このとき,\(f_M\)は明らかに定義域に入っていて,\[\|f_M-f\|_{L^2}^2=\sum_{n=M+1}^{\infty}\int_{S_n}\mid f(x)\mid^2\ dx\to 0\ (as\ M\to\infty)\]より,\(D(M_F)\)は稠密であることがわかります.

最後に(3)は各\(k\)に対して,\(B_k=S_{n(k)}\cap L_{m(k)}\)として,\[f_k(x)=\frac{I_{B_k}(x)}{\sqrt{\mu(B_k)}}\]と定義すると\(\|f_k\|_{L^2}=1,f_k\in L^2\)であって,

\[\| M_Ff_k\|_{L^2}=\Bigl(\int_{B_k}\frac{\mid F(x)\mid^2}{\mu(B_k)}\ dx\Bigr)^{\frac{1}{2}}>n(k)\to\infty\ (as\ k\to\infty)\]より,非有界作用素であることもわかります. \(\Box\)

こんな感じで、本質的に有界でない時でも結構面白いことがあったりします.すごくシンプルですが面白い作用素だと思います.

今回はこれで終わります.ありがとうございました.