最近読んだ本についてダラダラと3
ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16)
- 作者: 新井朝雄,木村俊房,飯高茂,西川青季,岡本和夫,楠岡成雄
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2014/07/25
- メディア: 単行本
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前回の続きです. 前回はあっさりと4章を語ったわけですが, その中でも強可換性について軽くしか触れてなかったのでもうちょっと補足しようと思います.
この強可換性においてちょっと注意が必要なのは定理4.10です.
(\(U_a(T)=e^{iaT}\)です. テキストではこういう表記はないのですが, なぜかボックス内で数式に直らなかったので仕方なくこうおいてます.)
また, \(R_z(T)\)は自己共役作用素\(T\)におけるレゾルヴェント\(R_z(T)=(T-z)^{-1}\)を表します. この定理の証明かなりあっさり書いてますが, 実際手を動かしてみるとちょっと大変でした. 具体的には2から3を示すときに, レゾルヴェントの積分表示を使えと書いてあるのですが, この等式を出すのにフビニを使ってガチャガチャやる必要があります. 積分表示は\(\Im z<0\)のとき
\[R_z(T)=-i\int_0^{\infty}e^{isT}e^{-isz}\ ds\] です.
\[(\psi, R_z(T)\psi)=\int_{\mathbb{R}}\frac{1}{\lambda-z}\ d(\psi, E(\lambda)\psi)\]
の被積分関数が\[\frac{1}{\lambda-z}=-i\int_0^{\infty}e^{i(\lambda-z)s}\ ds\]
となることに気づけば, フビニの定理を使って導くことができます. まぁでもこういうの手を動かしてやってみるのも結構楽しいですよね.
次に5章ですが前回Fourier変換とラプラシアンの話と書いたのですが, どちらかという偏微分作用素がメインですね. ていうか5章のタイトルがそうなんで. すいません紛らわしくて.
内容として前半は急減少関数から始まって, \(L^2\)のFourier変換を定義しています. 急減少関数の定義は様々ありますが, このテキストでは \[\forall m\in\mathbb{N}, \forall \alpha\in \mathbb{Z_{\geq 0}}^d, \lim_{|x|\to\infty}|x|^m\partial^{\alpha}f(x)=0\] で定義しています.僕はこの定義が一番急減少感あって好きですが, 擬微分作用素とか超関数やってるテキストをみると, 半ノルムのやつで定義する方が多い気がしますね. どれも得手不得手はあるような気がしますが. この定義の良さはずばりわかりやすい!この上なくシンプルなのがいいです. 半ノルムの方は\(\sup\)やらなんやらごちゃごちゃついててちょっとわかりづらいですからね. まぁあっちはあっちで都合がいいっていうのは超関数とかやってるとわかるんですけどね.
Fourier変換の証明等は普通というか, まぁやるよね~みたいな感じで読んでました.大事なのはFourier変換が\(L^2)のユニタリ作用素であるということです. 所謂プランシュエルの定理ってやつですね.
後半は, 偏微分作用素についてなのですが, Fourier変換で移すと掛け算作用素とユニタリ同値です.っていうのはずいぶん昔にブログに書いた気がします. まぁだから前半にFourier変換を出したわけですね. 掛け算作用素はめちゃめちゃわかりやすい作用素なので, こいつを調べることで偏微分作用素が調べられるというのは中々良いですね. 初めて読む人にはとても面白い内容だと思います. 僕も初めてこの事実とかを知ったときは面白かったのですが, いろんな本に書いてあるのでさすがに見飽きました. でも抑えるところはしっかり抑えて書いてる本だなぁっていうのはこの本読んでて思いました. 数学をちょっと真面目に勉強してるだけの人間の見解ではありますが.
ということでまたダラダラと書いていて長くなりそうなのでここで切ります. ではまた.