Laplacianの自己共役性の話がしたかった.
ちょっとだけマニアックな話.Laplacianの色々についてです.
まず,Laplacian云々の前にSobolev空間についてだけ簡単に定義しておきましょう.
注意として,一般化された導関数は存在すれば一意に定まります.これは変分法の基本原理によって示すことができます:
さて,特に各\(x_i\)に関する弱微分,すなわち\[\int_{\Omega}u(x)\frac{\partial\phi}{\partial x_i}\ dx=-\int_{\Omega}u_i(x)\phi(x)\ dx\]が成り立つとき,通常の導関数と同様に\(\displaystyle u_i=\frac{\partial u}{\partial x_i}\)と表すことにします.
また、\(u\)が通常の意味で微分可能ならば,弱微分可能であって,その導関数は通常の導関数と一致します.
そこで,特に一般化された導関数について次が成り立つような空間を考えます.
さて,Sobolev空間は次のようなノルムに関して完備になります:
また重要な性質として,\(\Omega=\mathbb{R}^n\)の時,\(C_0^{\infty}(\mathbb{R}^n)\)は上のノルムに関して稠密となります.
これらを踏まえたうえでLaplacianを一般化された導関数の意味で定義します.
今,\(C_0^{\infty}(\mathbb{R}^n)\subset D(\Delta)\)より,稠密に定義されていることはよいので,共役作用素を考えることができます.
しかし,一般に自己共役性を直接調べるのは結構しんどいです.そこでユニタリー同値という考え方を使って,その困難を回避します.
上の事実を用いて,Laplacianが自己共役になることを簡単にチェックしましょう.そのためにはユニタリー作用素を用意しなければなりませんが,\(L^2(\mathbb{R}^n)\)上には非常に有名なユニタリー作用素があります.
それはFourier変換です.Fourier変換はプランシュエルの定理によってユニタリー作用素であることがわかります.
Fourier変換には次のような性質がありました:
\[\mathcal{F}\left[\frac{\partial f}{\partial x_i}\right](\xi)=i\xi_i\mathcal{F}[f](\xi),\ \mathcal{F}[x_if](\xi)=i\frac{\partial \mathcal{F}[f]}{\partial \xi_i}(\xi)\]
これによって,
\[\mathcal{F}^{-1}\Delta\mathcal{F}u=-\mid\xi\mid^2 u,\ \mid \xi_i\mid^2=\sum_{i=1}^n\xi_i^2\]となります.
従って,あとは掛け算作用素として,特に\(f(x)=\mid x\mid ^2\)としたとき自己共役になっていればよいことになりますが,掛け算要素の共役作用素は元の関数の共役の掛け算作用素なので,\(f\)が実数値より自己共役作用素となります.
従って,Lapracianは自己共役作用素となります.またユニタリー同値だとスペクトルも一致するので,上の掛け算作用素のスペクトルを調べればLapracianのもわかります.
ところで,Laplacianではマイナスが出てきてしまうので,基本的にはマイナス倍をした\(-\Delta\)を考えることが多いです.
さて,通常のLaplacianは自己共役作用素であることが分かりましたが,作用素は定義域の条件を変えることでその性質も変わります.例えば次のように定義します:
\[A_0=-\frac{d^2}{d x^2},\ D(A_0)=\{u\in W^{2,\ 2}(0,\ 1);\ u^{(k)}(0)=u^{(k)}(1)=0,\ k=0,\ 1\}\]
つまり,この定義域は境界条件として元の関数も導関数も境界ではすべて\(0\)というようにしています.
実はこのように定義すると,自己共役作用素になりません.
これはつまり元の定義域の条件がきつすぎるということになるのですが,其の辺はまた次回お話したいと思います.