数学メモ帳

なんかとりあえず数学する

ちょっと真面目な数学:境界条件と自己共役性

// troy-sugaku-t.hatenablog.com 今回は自己共役性と定義域の関係性です. 例えば \[A_0=-\frac{d^2}{d x^2},\ D(A_0)=\{u\in W^{2,\ 2}(0,\ 1);\ u^{(k)}(0)=u^{(k)}(1)=0,\ k=0,\ 1\}\] などと定めると自己共役にならないことがわかります.それは次の事実…

ちょっと真面目な数学:自己共役作用素の定義の仕方について?

今日のテーマは自己共役作用素をどう定義するか?的な話です. なぜ自己共役でなければならないか?というのは様々な理由がありますが, 基本的に量子力学において物理量はヒルベルト空間上の自己共役作用素として表されるので, 物理的意味を持たすためには自…

最近読んだ本についてダラダラと4

ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16) 作者: 新井朝雄,木村俊房,飯高茂,西川青季,岡本和夫,楠岡成雄 出版社/メーカー: 共立出版 発売日: 2014/07/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る // 前回の続きです. 今…

最近読んだ本についてダラダラと3

ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16) 作者: 新井朝雄,木村俊房,飯高茂,西川青季,岡本和夫,楠岡成雄 出版社/メーカー: 共立出版 発売日: 2014/07/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る // 前回の続きです. 前…

最近読んだ本についてダラダラと2

ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16) 作者: 新井朝雄,木村俊房,飯高茂,西川青季,岡本和夫,楠岡成雄 出版社/メーカー: 共立出版 発売日: 2014/07/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る // 前回の続きで4章から…

最近読んだ本についてダラダラと

// お久しぶりです. このブログもいつぶりに書くのか全くわかりませんが, 今日は最近読んでる本とかを紹介しようかなと思います. ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16) 作者: 新井朝雄,木村俊房,飯高茂,西川青季,岡本和夫,楠岡成…

ひとくち数学「ヒルベルト空間のテンソル」

// ちょっとだけ面白いテンソルの話です. テンソルと聞くと私は代数の加群の話が真っ先に浮かんでくるのですが,皆さんはどうでしょうか?. で、テンソルというと結局実態がよくわからないことが多いですが、今回は実態の分かるものがあるという話ができたら…

関数解析を雑に復習する3

§3 \(L^P\)空間のいろいろ 今回は\(L^P\)空間について基本的な事を扱っていこうと思います. そして今更ですが,Lebesgue積分の知識はある程度仮定していますので其の辺はよろしくお願いします. 私自身がそのへんがモヤモヤし始めたらまとめようとおもいます. …

関数解析を雑に復習する2

§2 正射影定理 まずは今後何かと便利な正射影定理を示していこうと思います. その前にいくつか基本的な位相の概念を導入しましょう. Definition2.1\(X\)をノルムベクトル空間とし,\(D\subset X\)に対して,\[\overline{D}=\{x\in X;\ \exists\{x_n\}\subset D…

関数解析を雑に復習する1

§0 はじめに 関数解析のざっくりとした復習を兼ねて暇なときにできたらいいな(かなわぬ願い) 関数解析って結局何をやってるのさ?という話だけまずざっくりと、というか私の個人的な考えを話しておきます.よく巷では"無限次元の線形代数"と言われることが…

Laplacianの自己共役性の話がしたかった.

ちょっとだけマニアックな話.Laplacianの色々についてです. まず,Laplacian云々の前にSobolev空間についてだけ簡単に定義しておきましょう. Definition\(\Omega\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域とし,\(u\in L^1_{loc}(\Omega)\)とし,多重指数\(\alpha=(\alpha_1,\…

ひとくち数学「等周不等式とFourier級数」

// Fourier級数の数学的な応用例をひとつ. problem\(D\subset\mathbb{R}^2\)を有界領域とし,曲線\(C\)を\(D\)の境界で\(C\)のパラメータ表示\(c(s)=(x(s),\ y(s))\)が\(C^1級\)かつ\(c'(s)\neq 0\)を満たす単純閉曲線(つまり始点と終点以外交わりがない)とす…

複素解析覚書き5-正則関数の性質その2~強い定理たち

前回は正則関数の基本的な定理を示しましたので、今回は複素解析における強い定理をやっていきましょう.まぁCauchyの積分定理が一番強いんですけどね. まず,簡単なこととして次を示します. Lemma \(D\)を領域として,定関数でない\(D\)上正則な関数\(f\)があ…

複素解析覚書き4-正則関数を調べるその1

前回は円型のCauchyの積分公式を証明して終わりました. 今回はこのCauchyの積分公式から導かれる正則関数の強力な性質についてやっていきましょう. 正則関数の定義において,\(C^1\)級を仮定していませんでしたが,次の定理により\(C^1\)級どころか何回でも微…

複素解析覚書き3-Cauchyの積分定理の補足とか

前回はCauchyの積分定理の特別なバージョンについては証明しました. 今回は正則関数の複素積分をより広い範囲でできるようにすることから始めましょう. 前回凸領域上の正則関数は原始関数を持つことを証明しました.今回はこれを使い連続曲線(PSとは限らない)…

ひとくち数学「ディリクレ積分をゴリゴリっと計算する」

Problem次の積分を求めよ.\[\int_{0}^{\infty}\frac{\sin x}{x}\ dx\] 今回はディリクレ積分について最近色んな方法を知ったので今回はなるべく前提知識を仮定しない方法でどれだけできるかを試したいと思います. 基本的なこととして,これはみればわかります…

複素解析覚書き2-積分定理とか

今回は複素線積分について適当に話します. その前に正則関数の定義から行きましょう. Definition複素関数\(f\)が点\(z_0\)で正則であるとは,ある\(r>0\)が存在して,\(z_0\)の\(r\)近傍\(U_r(z_0)=\{z;\ \mid z-z_0\mid

複素解析覚書き1-複素数の定義とか

最近,複素解析もまた忘れてきてるなーと思ったので使いそうなものを覚書き.内容は面白いものでもないかもですが ということでまずは複素数の定義から. ここでは複素数をある程度数学的にまともな定義を与えたい気がするので,そうします. 定義は様々あります…

ひとくち数学「次元の話」

// 3次元は立体で2次元は平面で・・・なんて説明はここ最近だとよく耳にします.まぁそれこそ二次元という言葉も今では馴染みのある言葉になりました. そんな直感的にはなんとなく理解している次元ですが,数学的にはどのように定義されるのでしょうか?という…

ひとくち数学:表現行列の話

表現行列 // Definition\(V,\ W\)を有限次元複素ベクトル空間とし,\(T\colon V\to W\)を線形写像,\(\{v_1,\ \cdots v_n\},\ \{w_1,\ \cdots w_m\}\)を\(V,\ W\)の基底とする.このとき,\(n\times m\)行列\(A\)で\[(T(v_1)\ T(v_2)\cdots T(v_n))=(w_1\ \cdots…

掛け算作用素の話をしたかった その3

前回は掛け算作用素を定義しました. Review\(|F(x)|\)がa.e有限な\(\mathbb{R}^N\)上のボレル可測関数\(F\)とする.このとき,\(L(\mathbb{R}^N)\)から自身への線形作用素\(M_F\)を\[\forall f\in L^2(\mathbb{R}^N),(M_Ff)(x)=F(x)f(x)\ a.e.x\]と定義する.た…

掛け算作用素の話をしたかった(準備その2)

書いたはいいけど存在忘れそう. 今回は線形作用素について必要最低限述べて行こうと思います. 線形作用素という文字だけ見るとなんか難しそうかもしれませんが別にたいしたことないです. ここではヒルベルト空間に限っておきますが,別にBanach空間でも変わり…

掛け算作用素の話をしたかった

掛け算作用素の話をしたい ブログすらかく暇なかった(言い訳). 今回から掛け算作用素とかいうシンプルだけど割と大事な作用素を扱ってみたいと思います. コイツの話は結構Lebesgue積分の復習にもなるのでお得だと思うので,暇なら読んでみてください. ところ…

例をあげるだけ

今回は例を上げろと言われたら役に立つかもしれないメモです. その1 完備でない無限次元ノルムベクトル空間 念のため,ノルム空間等の定義は私の記事 troy-sugaku-t.hatenablog.com に書いてあります. まぁ,記事を改めて読み直すほどのものでもないので,さっ…

ひとくち数学「Γ関数は階乗の拡張?」

Γ関数 以下適当に複素解析の基本的な話は既知として話を進めます. まずはとりあえず定義からいきましょう. Definition(\(\Gamma\)関数)\(s\in\mathbb{C}\)として,\(\Re (s)>0\)とするとき,\[\Gamma(s)=\int_{0}^{\infty}t^{s-1}e^{-t}\ dt\] と定義する. pro…

ひとくち数学「Rouchéの定理による代数学の基本定理」

今回はタイトルのとおりみんな大好き代数学の基本定理です. なお今回は複素解析の基本的な知識(極とか複素積分とかその辺)に関しては知ってるものとして話を進めます. まずひとつ定義から始めましょう. Definition(有理型)複素関数\(f(z)\)が領域\(D\)で有…

なんか適当に数学する5

\(\ell^p\)の可分性 今回は\(\ell^p\)の可分性について軽く触れたいと思います.その前に定義を書きます. Definition(Dense)\(V\)をベクトル空間とし,\(\|\cdot\|\)をV上のノルムとするとき,\(A\subset V\)が\(\|\cdot\|\)に関して稠密(Dence)であるとは,\[\f…

何か適当に数学する4

\(\ell^p\)の完備性 今回は,\(\ell^p\)の完備性について触れたいのですが,その前に今更ですが復習も兼ねて色々と基本事項を確認しましょう. Definition(Vector Space) \(V\)がベクトル空間(Vector Space)であるとは,\(V\)上で定義された加法に関してアーベル…

何か適当に数学する3

Minkowski inequality 今回は\(\ell^p\)版三角不等式Minkowskiの不等式を示しますが,この形のものは非常に特別な形で実際はもっと一般化できることは少しコメントしておきます. まぁ,それはまたその時が来たらでいいのでとりあえず次を示しましょう. Theorem…

なんか適当に数学する2

Hölder's inequality 今回から\(\ell^p\)について具体的に調べていこうと思います. 今回はMinkowskiの不等式に利用する Hölderの不等式についてみていきましょう. Theorem(Hölder's inequality)\(1< p<\infty\), \(x=\{x_i\}_{i=1}^{\infty},\ y=\{y_i\}_{i=…