数学メモ帳

なんかとりあえず数学する

ひとくち数学「Rouchéの定理による代数学の基本定理」

今回はタイトルのとおりみんな大好き代数学の基本定理です.

なお今回は複素解析の基本的な知識(極とか複素積分とかその辺)に関しては知ってるものとして話を進めます.

まずひとつ定義から始めましょう.

Definition(有理型)複素関数\(f(z)\)が領域\(D\)で有理型であるとは\(D\)で除去可能特異点か極しか持たないことをいう.


proof

これを頭に入れた上で次が成り立ちます.

Theorem(Rouché's theorem)\(C\)を単純閉曲線とし,\(D\)をその内部とし,\(D\)の閉包\(\overline{D}\)で複素関数\(f(z),g(z)\)は有理型かつ,\(C\)上に極も零点ももたないとする. このとき,任意の\(z\in C\)に対し,\(\mid f(z)\mid >\mid g(z)\mid\)が成り立つならば,\(N_{f+g}=N_f\)が成り立つ. (ただし,\(N_f\)は\(f\)の重複度を含めた\(D\)内に含まれる零点の個数を表す.)

上の定理が今回の主役のRouchéの定理です.本当はもうちょっと一般化できますが,今回はこれで十分なのでいいでしょう.一件使い道がわからない定理ですが,解の個数を調べるのに非常に便利です.

例えば,\(C\)を単位円の円周として,\(f(z)=4z^3,\ g(z)=z^7+z-1\)とすると,\(\mid z\mid =1\)ならば,\[\mid g(z)\mid\leq \mid z\mid ^7+\mid z\mid +1=3<4=4\mid z\mid^3=\mid f(z)\mid\] となるので,\(f(z)\)が\(0\)を重複度\(3\)の零点を持つので,\(z^7+4z^3+z-1=0\)は\(\mid z\mid <1\)で3つの解を持つことがわかります.

これをより一般化して次が成り立ちます:

Theorem(代数学の基本定理)\(p(z)\)を\[p(z)=z^n+a_{n-1}z^{n-1}+\cdots a_1z+a_0\ (a_i\in\mathbb{C})\] とするとき,\(p(z)\)は重複度を含め,\(n\)個の解をもつ.

proof

証明は非常に簡単です.

\(f(z)=z^n,\ g(z)=p(z)-f(z)\)と定義します.このとき,\(\mid z\mid >1\)ならば,\[\mid g(z)\mid\leq \mid a_{n-1}\mid\mid z\mid^{n-1}+\cdots +\mid a_1\mid\mid z\mid +\mid a_0\mid \leq nM\mid z\mid^{n-1}\ (M=\max_{1\leq k\leq n}\mid a_k\mid)\]

となります.よって,正の数\(R>0\)を\(R>\max\{1,\ nM\}\)となるように取ると,\(\mid z\mid >R\)ならば,\[\frac{\mid g(z)\mid }{\mid f(z)\mid}<\frac{nM}{R}<1\]が成り立ちます.

となって,これは\(\mid f(z)\mid>\mid g(z)\mid\)を意味し,\(f(z)\)は半径\(R\)の円盤の外で零点を持たないのでRouchéの定理より,\(p(z)\)も外側では零点持ちません.

その一方で,\(f(z)\)明らかに半径\(R\)の円盤内で零点を重複度を込めて丁度\(n\)個持つので,再びRouchéの定理より,\(p(z)\)は円盤内に\(n\)個の零点を持つことになってこれは結論を意味します. \(\Box\)

Liouvilleの定理を使って楽に証明できる代数学の基本定理ですが,Rouchéの定理での証明はあまりなかった?(一応wikipediaには載ってました)ぽいのでやってみました.

以上で終わります.読んでいただきありがとうございました.

間違い等ございましたらコメントかTwitterで指摘していただけると幸いです.