数学メモ帳

なんかとりあえず数学する

掛け算作用素の話をしたかった

掛け算作用素の話をしたい

ブログすらかく暇なかった(言い訳).

今回から掛け算作用素とかいうシンプルだけど割と大事な作用素を扱ってみたいと思います.

コイツの話は結構Lebesgue積分の復習にもなるのでお得だと思うので,暇なら読んでみてください.

ところで作用素云々の前に\(L^p\)については定義する必要があるのでそこからいきましょう.

Definition\(1\leq p<\infty\)とし,\ \(\Omega\subset\mathbb{R}^N\)を開集合とするとき,\[L^p(\Omega)=\{f\colon\Omega\to \mathbb{C}\ ;\ \int_{\Omega}\mid f(x)\mid^p dx<\infty\}\]と定義する.ただし, 上の積分はLebesgue測度に関する積分で,\(f=0\)はLebesgue測度に関してほとんどいたるところ\(f=0\)という意味で使う.

念のため一応書いておきますが,Lebesgue測度\(\mu\)に関してほとんどいたるところ\(f=0\)であるとは,\(\mu(N)=0\)なる集合\(N\subset\mathbb{\Omega}\)が存在して,\(\Omega\setminus N \)上\(f=\)となることをいい,\(f=0\ a.e.\mu\)などと書きます.

またこのような集合\(N\)を零集合といいます.

細かいことは抜きにして,この空間は線形ベクトル空間となります.これは\(\ell^p\)と同様に示すことができます.

また次のことが成り立ちます.

proposition\(1\leq p<\infty\)とし,\ \(\Omega\subset\mathbb{R}^N\)を開集合とする.\(f\in L^p(\Omega)\)に対して,\[\|f\|_p=\Bigl(\int_{\Omega}\mid f(x)\mid^p\ dx\Bigr)^{\frac{1}{p}}\]と定義するとこれは\(L^p(\Omega)\)上のノルムであり,このノルムに関して完備となる.

ノルムベクトル空間となるまでは基本的に\(\ell^p\)と同様ですが, 完備性は若干\(\ell^p\)よりは面倒です.本来ならば示すべきですが,証明については関数解析の本には大抵載っているのでそちらを参照する方がわかりやすいでしょう.

ところで,上でさらっとノルムベクトル空間になると言ってしまいましたが,実際は少しだけ注意することがあって

\(\|f\|_p=0\)ならば\(f=0\ a.e.\mu\)となることは自明ではありません.

実際,\(\|f\|_p=0\)ならば,積分範囲を\(\Omega(\mid f\mid>0)=\{x\in\Omega\ ; \mid f(x)\mid >0\},\ \Omega(f=0)=\{x\in\Omega\ ;f(x)=0\}\)に分けて考えると結局\[\|f\|_p^p=\int_{\Omega(\mid f\mid>0)}\mid f(x)\mid^p\ dx=0\]です.

ここで,\(\Omega(\mid f\mid >0)=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\Omega(\mid f\mid>\frac{1}{n})\)なので(ただし,\(\Omega(g>a)=\{x\in\Omega\ ; g(x)>a\}\))

\[0=\int_{\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\Omega(\mid f\mid >0)}\mid f(x)\mid^p\ dx>\int_{\Omega(\mid f\mid >\frac{1}{n})} \mid f(x)\mid ^p\ dx>\frac{1}{n^p}\mu(\Omega(\mid f\mid >\frac{1}{n}))\]

となり,\(\mu(\Omega(\mid f\mid >\frac{1}{n}))=0\)が任意の\(n\in \mathbb{N}\)に対して成り立って,\[\mu(\bigcup_{n\in\mathbb{N}}\Omega(\mid f\mid >0))\leq \sum_{n=1}^{\infty}\mu(\Omega(\mid f\mid >\frac{1}{n}))=0\]となって,これは\(f=0\ a.e.\mu\)を意味します.

逆にほとんどいたるところ\(0\)であれば零集合上の積分が\(0\)となることからノルムが\(0\)になることがわかります.

なお一般に\(f\)が連続であれば,真に\(0\)ですが,可積分な関数という条件だけでは真に\(0\)であることは出てきません.

従って,正確には\(p\)上可積分全体をノルムの核で割った商集合を考えて、それ上のノルムであると考えるのが適当ですが、便宜上このように扱うことが多いです.

ところで,このノルムに関して完備になったわけですが,特に\(p=2\)のとき次の内積に関してヒルベルト空間であることがわかります.

proposition\(f,g\in L^2(\Omega)\)に対して,\[(f,g)=\Bigl(\int_{\Omega}f(x)\overline{g(x)}\ dx\Bigl)^{\frac{1}{2}}\]と定めると,\(L^2(\Omega)\)上の内積となり,この内積に関してヒルベルト空間となる.

ここでヒルベルト空間とは内積\((\cdot,\cdot)\)から定まるノルム\(\|\cdot\|=\sqrt{(\cdot,\cdot)}\)に関して完備となる空間のことを言います.

取り急ぎ準備をしたので,もしかしたら不備があるかもしれませんが、大体このくらい言っておけば少し位は話ができるのではないかと思いますので準備を終わります.というか思いのほか疲れたので今回は終わります.

次回は線形作用素の話でもやって、掛け算作用素の話ができたら嬉しい感じです.