数学メモ帳

なんかとりあえず数学する

関数解析を雑に復習する3

§3 \(L^P\)空間のいろいろ

今回は\(L^P\)空間について基本的な事を扱っていこうと思います.

そして今更ですが,Lebesgue積分の知識はある程度仮定していますので其の辺はよろしくお願いします.

私自身がそのへんがモヤモヤし始めたらまとめようとおもいます.

ではまず,\(L^p\)空間の定義についてですね.

Definition3.1\(\Omega\subset \mathbb{R}^n\)に対して,\[1\leq p<\infty,\ L^p(\Omega)=\left\{f\colon {\bf \mu-可測}\ ;\ \int_{\Omega}\mid f(x)\mid^p\ dx<\infty\right\}\]と定義し,\[ p=\infty,\ L^{\infty}(\Omega)=\{f\colon\mu-{\bf可測}\ ;\ \exists N\subset\Omega,\exists M>0;\ \mu(N)=0,\ \mid f(x)\mid\leq M,\ (x\in\Omega\setminus N)\}\]と定義する.ただし,\(\mu\)はLebesgue測度を表す.

 

--Remark--

\(f\in L^p(\Omega)\)となるとき,\(f\)は本質的に有界(essentialy bounded)であるという.また上のような\(M\)を本質的上界といい,その\(\inf\)を\(ess\sup_{x\in\Omega}\mid f(x)\mid\)で表す.

--End of Remark--

上では一応\(L^{\infty}\)を定義しましたが基本的には\(1\leq p<\infty\)のときのみ考えることが多いです.

さて,早速やって行こうと思うのですが,以下では\(u=v\ a.e.\)なるものは同一視して話を進めます.その理由は後ほど話します.

Theorem3.2\(\Omega\subset \mathbb{R}^n\)に対して,\(1\leq p<\infty\)のとき,\(L^p(\Omega)\)は\[\| f\|_{L^p(\Omega)}=\left(\int_{\Omega}\mid f(x)\mid^p\ dx\right)^{\frac{1}{p}}\]をノルムとしてBanach空間となる.特に,\(p=2\)のとき,\[\langle f\ ,\ g\rangle_{L^2(\Omega)}=\int_{\Omega}f(x)\overline{g(x)}\ dx\]を内積とするHilbert空間となる.

 

--Remark--

\(\Omega\)についての話であることが明らかな時はノルムの添字を省略して,単に\(\|\cdot\|_p\)と書く事も多い.

--End of Remark--

これを示す前に二つほど,不等式について述べておきましょう.

Lemma3.3(Hölderの不等式)\(1<p<\infty\)とし,\(1/p+1/q=1\)なる\(q\)をとる.このとき,\[\mid\int_{\Omega} f(x)g(x)\ dx\mid\leq\|f\|_p\|g\|_q\ (f\in L^p,\ g\in L^q)\]が成り立つ.

 

もう一つはMinkowskiの不等式ですね.

Lemma3.4(Minkowskiの不等式)\(1\leq p<\infty\)のとき,\(f,\ g\in L^p\)ならば,\(f+g\in L^p\)であって,\[\|f+g\|_p\leq \|f\|_p+\|g\|_q\]が成り立つ.

 

この二つの不等式については,\(\ell^p\)の時と同様にして示すことができますので証明はしません.

proof of Theorem3.2

Step1\(L^p\)はベクトル空間.

まず,\(L^p\)が標準的な和とスカラー倍で\(\mathbb{C}\)ベクトル空間となることはMinkowskiの不等式などを用いればわかります.

Step2 \(L^p\)はノルムベクトル空間

次にノルム空間であることを示しましょう.三角不等式はMikowskiの不等式そのものですし,スカラー倍が前に出せることもよいでしょう.また,ノルムの非負性は定義と積分の単調性により従います.よって,\(\|f\|=0\Rightarrow f=0\ \ (a.e.)\)のみ示せば十分です.

先ほどの同一視はここに関係があって,それによってノルム空間となります.\(a.e.0\)でも真に\(0\)とは限りませんからね.より神経質になるなら同値類を持ち出す必要がありますが,それは好みの問題なのでお任せします.(がばがば)

今,\(\|f\|=0\)としましょう.このとき,\(\Omega (\mid f\mid >a)=\{x\in \Omega;\ \mid f(x)\mid>a\}\)とおきます.

さて,\(\Omega(\mid f\mid>0)=\bigcup_{n=1}^{\infty}\Omega\left(\mid f\mid>\frac{1}{n}\right)\)となるので,\[0=\|f\|^p_p>\int_{\Omega(\mid f\mid >1/n)}\mid f(x)\mid ^p\ dx>\frac{1}{n^p}\mu\left(\Omega(\mid f\mid>\frac{1}{n}\right)\]より,\(\mu\bigl(\Omega (\mid f\mid>1/n\bigr)=0\)がわかります.よって,劣加法性によって,\[\mu(\Omega(\mid f\mid>0))\leq \sum_{n=1}^{\infty}\mu\left(\Omega(\mid f\mid>\frac{1}{n}\right)=0\]となるので,\(f=0\ (a.e.)\)となります.よって,ノルムベクトル空間となります.

Step3 \(L^p\)はBanach空間

完備性は非常に巧妙に収束先を構成します.

まず,\(\{f_n\}\)を\(L^p(\Omega)\)が\(\forall \varepsilon>0,\ \exists N\in\mathbb{N};\ n,\ m\geq N\Rightarrow \|f_n-f_m\|_p<\varepsilon\)を満たすとしましょう.

この時\(\forall k\in\mathbb{N},\ \|f_{n(k+1)}-f_{n(k)}\|<1/2^k\)を満たす部分列\(\{f_{(n(k)}\}\)を構成することができます.

今Cauchy列の定義において,\(\varepsilon=1/2\)としましょう.このとき,\[\exists n(1)\in\mathbb{N};\ n>n(1)\Rightarrow \|f_n-f_{n(1)}\|<\frac{1}{2}\]が成立します.さてこのようにとった番号\(n(1)\)に対して,今度は\(\varepsilon=1/2^k\)としてやれば,\[\exists n(2)>n(1);\ n>n(2)\Rightarrow \|f_n-f_{n(2)}\|<\frac{1}{2^2}\]と出来ることが分かります.よってあとはこれを繰り返して,\(n(k)<n(k+1)\ (k\in\mathbb{N})\)であって,\(n>n(k)\Rightarrow \|f_n-f_{n(k+1)}\|<1/2^k\)となり,特に\(n=n(k+1)\)とすれば良いことがわかります.

今,上のような部分列を改めて\(\{f_k\}\)と書く事にして,\(f_0(x)=0\)とし\[g_k(x)=\sum_{j=1}^{k}\mid f_j(x)-f_{j-1}(x)\mid\]と定めましょう.このとき,\(\{f_k\}\subset L^p(\Omega)\)とMinkowskiの不等式を用いることで,\(g_k\in L^p(\Omega)\)となります.

より詳細に書けば,\[\|g\|_p\leq \| f_1\| +\sum_{k=1}^{\infty}\frac{1}{2^k}=\|f_1\|+1\]となります.また定義より,\(\{g_k\}\)は単調増加なので,単調収束定理によって,

\[\|\lim_{n\to \infty}g_k\|^p=\lim_{k\to\infty}\|g_k\|\leq (\|f_1\|+1)^p<\infty\]により,ほとんどいたるところ有限な関数\(g=\lim_{k\to\infty}g_k\in L^p\)が存在します.

ここで,\[f_k(x)=\sum_{j=1}^{k}(f_j(x)-f_{j-1}(x))\]なので,\(f_k\)はほとんどいたるところ絶対収束します.故に\(\{f_k\}\)はある関数\(f\)にほとんどいたるところ各点収束することがわかります.

特に,今,\(\mid f(x)\mid\leq g(x)\ a.e \)より,\(f\in L^p\)で,\[\mid f(x)-f_k(x)\mid\leq \sum_{j\geq k}\mid f_j(x)-f_{j-1}(x)\mid\leq g(x)\]が成り立つことがわかります.故にLebesgueの優収束定理から\[\lim_{k\to\infty}\|f-f_k\|^p=\int_{\Omega}\lim_{k\to\infty}\mid f(x)-f_k(x)\mid^p\ dx=0\]となります.これはすなわち,\(\exists N'\in\mathbb{N};\ k\geq N'\Rightarrow \|f_k-f\|<\varepsilon\)を意味します.

よって,\(N\)を十分大に取り直せば,\(n\geq N\)に対して,\(\|f_n-f\|\leq \|f_n-f_n(k)\|+\|f_{n(k)}-f\|<2\varepsilon\)となるので収束列であることがわかり,完備であることが示されました.\(\Box\)

完備性の証明がやたらと長いですが,この証明の副産物として次の系を得られます.

Corollary3.5\(1\leq p<\infty\)とし,\(\{f_n\}\subset L^p\)は\(\|f_n-f\|_p\to 0\ (as\ n\to\infty)\)を満たすとする.このとき,ある部分列\(\{f_{n(k)}\}\)が存在して,\(f\)にほとんどいたるところ各点収束する.

 

proof

収束列はCauchy列なので,Theorem3.2と同様の議論によってある部分列\(\{f_{n(k)}\)を構成してやれば,ほとんどいたるところ各点収束します.

よって,その収束先を\(g\)とおけば,\(\|f-g\|_p\leq\lim_{k\to\infty}(\|f-f_{n(k)}\|_p+\|g-f_{n(k)}\|)=0\)となるので,\(f=g\ (a.e.)\)となります.\(\Box\)

それと,\(L^p\)の直ちにわかる性質をひとつだけ述べて今回は終わりにしましょう.

propsition3.6\(1\leq p\leq q<\infty\)とし,\(\mu(\Omega)<\infty\)とするとき,\(L^q(\Omega)\subset L^p(\Omega)\)が成り立つ.

 

これはHölderの不等式からすぐわかるので省略します.

といったところで,今回は終わりたいと思います.次回も\(L^p\)について(稠密性やmollifierなどを予定)やっていこうと思います.

本当は作用素の話をちょっとしたかっただけなんですけど,いつになったらでてくるのやら・・・・

関数解析を雑に復習する2

§2 正射影定理

まずは今後何かと便利な正射影定理を示していこうと思います.

その前にいくつか基本的な位相の概念を導入しましょう.

Definition2.1\(X\)をノルムベクトル空間とし,\(D\subset X\)に対して,\[\overline{D}=\{x\in X;\ \exists\{x_n\}\subset D;\ \lim_{n\to\infty}x_n=x\}\]を\(D\)の閉包(closure)という.特に,\(D=\overline{D}\)なるものを閉集合(closed set)という.

また,\(M\)が\(X\)の部分空間で閉集合となるとき,\(M\)は\(X\)の閉部分空間(closed subspace)であるという.

 

--Remark--

\((1)\ D\subset \overline{D}\)

\((2)\ D\)が閉集合\(\Leftrightarrow\)\(D\)の任意の収束列\(\{x_n\}\)に対し,\(\lim_{n\to \infty}x_n\in D\)

--End of Remark--

またコンパクト性についても先に定義しておきましょう.

Definition2.2\(X\)をノルムベクトル空間とし,\(K\subset X\)とする.\(K\)の任意の点列\(\{x_n\}\)が\(K\)内に収束する部分列を持つとき,\(K\)はコンパクト(compact)であるという.また,\(\overline{L}\)がコンパクトとなるとき,\(L\)は相対コンパクト(Relatively Compact)であるという.

 

解析では上のようにコンパクト性を定義することが多いです.(まあどうせノルム空間しか扱わないしよくね的なノリ)

これらに関して基本的な性質をまとめておきましょう.

Proposition2.3\(X\)をノルムベクトル空間とし,\(M\)を\(X\)の閉部分空間とする.
    \((1)\ X\)が完備ならば,\(M\)も\(X\)のノルムに関して完備である.
    \((2)\ X\)がコンパクトならば,\(M\)も\(X\)のノルムに関してコンパクトである.

 

--Remark--

無限次元ベクトル空間では有界閉集合であってもコンパクトであるとは限らない.それについては次の記事を参照.

 

--End of Remark--

これはさすがに証明は容易と言っていいレベルなので飛ばして先に進みましょう.

さて,ここからは内積空間において重要な閉部分空間についてです.

Definition2.4\(H\)を内積空間とし,\(M\)を部分空間とする.このとき,\[M^{\perp}=\{x\in H;\ \forall y\in M,\ \langle x\ ,\ y\rangle=0\} \]を\(M\)の直交補空間(orthogonal complement)という.

 

ここからは直交補空間の基本的な性質をまとめましょう.

proposition2.5\(H\)を内積空間とし,\(M\)を部分空間とする.
    \((1)\ M^{\perp}\)は常に閉部分空間である
    \((2)\ M\subset N\)なる部分空間に対し,\(N^{\perp}\subset M^{\perp}\)である.
    \((3)\ \Bigl(\overline{M}\Bigr)^{\perp}=M^{\perp}\)

 

proof

\((1)\)についてまず示しましょう.任意の収束列\(\{x_n\}\)をとり,収束先を\(x\)とします.

このとき,内積の連続性から,\(y\in M\)に対して,\[\langle x\ ,\ y\rangle=\lim_{n\to \infty}\langle x_n\ ,\ y\rangle=0\]となるので,\(x\in M^{\perp}\)となります.

\((2)\)は\(u\in M\)ならば\(u\in N\)ですから,\(v\in N^{\perp}\)とすれば,\(\langle u\ ,\ v\rangle=0\)となるのでわかります.

\((3)\)は\((2)\)より,\(\Bigl(\overline{M}\Bigr)^{\perp}\subset M^{\perp}\)はすぐにわかります.

逆の包含関係を示します.\(x\in M^{\perp}\)と\(y\in \overline{M}\)を任意に取りましょう.

閉包の定義より,\(\lim_{n\to \infty}y_n=y\)なる\(\{y_n\}\subset M\)が存在します.従って,内積の連続性により,\[\langle x\ ,\ y\rangle=\lim_{n\to\infty}\langle x\ ,\ y_n\rangle=0\]より\(x\in \Bigl(\overline{M}\Bigr)^{\perp}\)となります.よって,\((3)\)も示されました.\(\Box\)

さて,基本的な性質を示したところで本題に入るために集合と点の距離を定義しましょう.

Definition2.6\(X\)をノルムベクトル空間とし,\(M\subset X\)とする.このとき,\(x\in X\)に対し,\[d(x,\ M)=\inf_{y\in M}\|x-y\|\]を点\(x\)と集合Mの距離という.

 

これに関して次のことが成り立ちます.

Theorem2.7(正射影定理)\(H\)をHilbert空間として,\(M\)を閉部分空間とする.このとき,任意の\(u\in H\)に対して,\[u=u_1+u_2\]なる\(u_1\in M,\ u_2\in M^{\perp}\)がただ一つ存在する.

 

--Remark--

上の定理の\(x_M\)を\(x\)の正射影という.

--End of Remark--

proof

証明はそこそこ長いですが,一つ一つはそこまで難しくはありません.まず,次を示します:

\[\forall x\in H,\ \exists! x_M\in M;\ \|x-x_M\|=d(x,\ M)\ \ \ (\star)\]

今以下\(x\)を固定して,\(d=d(x,\ M)\)とおきましょう.さて,\(\inf\)の定義により

\[\forall \varepsilon>0;\ \exists y\in M;\ d+\varepsilon>\|x-y\|\]が成り立ちます.

従って特に\(\varepsilon=1/n\ (n\in\mathbb{N})\)とすれば,\[\exists y_n\in M;\|x-y_n\|-d<\frac{1}{n}\]となることがわかります.

これより,\(\lim_{n\to\infty}\|x-y_n\|=d\)となります.今\(\{y_n\}\)がCauchy列となることを示しましょう.

今\(H\)はHilbert空間なので,中線定理を使うことができます.従って,\[\|y_n-y_m\|^2=\|(y_n-x)-(y_m-x)\|^2=2\|y_n-x\|^2+2\|y_m-x\|^2-4\left\|\frac{y_n+y_m}{2}-x\right\|\]

さて,\(M\)が部分空間となるので\((y_n+y_m)/2\in M\)であり,また\(\forall y\in M,\ \|x-y\|\geq d\)であることから,

\[\leq 2\|y_n-x\|^2+2\|y_m-x\|^2-4d^2\to 4d^2-4d^2=0\]となることがわかります.従って,\(\{y_n\}\)はCauchy列となります.よって完備性より,\(\{y_n\}\)の収束先\(x_M\)が存在します.

\(M\)が閉であるから\(x_M\in M\)であって,ノルムの連続性から,\(\|x-x_M\|=\lim_{n\to\infty}\|x-y_n\|=d\)を得ます.

また\(d=\|x-y_M\|\)なる\(y_M\)がほかにあったとすると,\[\|x_M-y_M\|^2\leq 2\|x_M-x\|^2+2\|x-y_M\|^2-4d^2=4d^2-4d^2=0\]より\(x_M=y_M\)となります.

さて,\((\star)\)のような\(x_M\)が取れるので,そこで,\(x_1=x_M,\ x_2=x-x_M\)と定義するとこれが求めるものとなります.

そのためには\(x_2\in M^{\perp}\)を示せばいいわけですが,\(z\in M,\ t\in\mathbb{R}\)を任意に取りましょう.

\(\|x_2\|=d\)と,\(x_1+tz\in M\)に注意すれば,\[d^2\leq\|u-u_1-tz\|^2=\|u_2-tz\|^2=d^2-2\Re(\langle u_2\ ,\ z\rangle)t+t^2\|z\|^2\]となるので,判別式より\(\Re(\langle u_2\ ,\ z\rangle)=0\)です.

あとは,\(z\)を\(iz\)に置き換えれば虚部も\(0\)になることが同様にしてわかるので,\(\langle x_2\ ,\ z\rangle=0\)であることがわかり,これで証明が終わります.\(\Box\)

最後に正射影定理からすぐに従う命題をいくつか扱って終わりにしましょう.

propsition2.8\(H\)をHilbert空間とし,\(M\)を部分空間とする.
    \((1)\ (M^{\perp})^{\perp}=\overline{M}\)
    \((2)\ \overline{M}=H\Leftrightarrow M^{\perp}=\{0\}\)

 

proof

\((1)\)をまず示しましょう.proposition2.5\((3)\)より,\(\overline{M}\subset (M^{\perp})^{\perp}\)となることはわかるのでその逆の包含関係を示せば十分です.

今,\(x\in(M^{\perp})^{\perp}\)とすると,\(\overline{M}\)が閉部分空間であることから,正射影定理を適用して,\[x=x_1+x_2\]なる\(x_1\in\overline{M},\ x_2\in M^{\perp}\)があります.

このとき,\(x-x_1=x_2\)で,\(x-x_1\in (M^{\perp})^{\perp},\ x_2\in M^{\perp}\)であって,\((M^{\perp})^{\perp}\cap M^{\perp}=\{0\}\)より,\(x=x_1\)となるので,\(x\in \overline{M}\)となります.

従って,\((1)\)の証明はこれで終わります.次に\((2)\)を示します.

\(\Leftarrow )\)はproposition2.5\((3)\)及び\((1)\)より直ちにわかります.

\(\Rightarrow )\)を示しましょう.\(x\in M^{\perp}\)を任意に取ると,proposition2.5\((3)\)と仮定から\[\langle x\ ,\ x\rangle=\|x\|^2=0\]より,\(x=0\)となるので結論を得ます. \(\Box\)

次回以降は超重要な空間の\(L^p\)空間について話していこうと思います.(おそらく3回くらいは最低でもやる気がします.この辺の空間を調べるのが結構しんどいですがこれが終われば楽しい楽しい一般論がまってます.)

今回はこれで終わります.間違い等ございましたらご指摘願います.

関数解析を雑に復習する1

 

§0 はじめに

関数解析のざっくりとした復習を兼ねて暇なときにできたらいいな(かなわぬ願い)

関数解析って結局何をやってるのさ?という話だけまずざっくりと、というか私の個人的な考えを話しておきます.よく巷では"無限次元の線形代数"と言われることが多い関数解析ですが実際線形写像がメインテーマではあります.

それはなぜかというと,微分積分ってどっちも線形性があるというのがあります.解析の主役とも言っていいこの二つが線形性を持ってるのだからそのへんの関数空間上の線形写像を調べたくなるというのは割と自然だと思います.

つまり,其の辺の線形性をもつ奴らをもっと一般的に見て微分方程式とか積分方程式とかそのへんが解けたらうまあじでは?というのがモチベーションになると思います.(ガバガバ)

で実際やってみると,え,これ線形代数でなんか見たことあるってなるので無限次元の線形代数という一言につながるわけです.勿論線形代数と違うところもいっぱいありますけどね.

つまり関数解析の舞台はノルムベクトル空間(大体BanachもしくはHilbelt空間)で主役は線形写像ということです.なので流れとしては舞台及び道具を用意するのが前半で主役を性質の良い順から調べていくという感じのよくあるパターンです.

まぁとりあえずそのへんを頭に入れながら少しずつやっていきましょう.おそらく話のしやすさ的にHilbert空間を中心に話すことになりますが,一般のBanach空間で成り立つ事実はなるべく一般の形で述べようと思います.

 

いきなりですが,Banach空間までの定義は過去の記事に書いてあるので適時参照してもらえると助かります.また無限次元のBanach空間の有名な例として\(\ell^p\)があるのでそのへんも一緒に見てくれたら幸いです.

§1 Hilbert空間の基礎事項

まずは基本的な話からしていきましょう.以下,単にベクトル空間といったときは複素係数を意味します.

Definition1.1\(X\)をベクトル空間とする.このとき\(\langle \cdot\ ,\ \cdot\rangle\colon X\times X\to \mathbb{C}\)が次を満たすとき,内積(inner product)という:\(x,\ y,\ z\in X,\ \alpha\in\mathbb{C}\)に対して,
    \((1)\ \langle ax+y\ ,\ z\rangle=\alpha\langle x\ ,\ y\rangle+\langle y\ ,\ z\rangle \)
    \((2)\ \langle x\ ,\ y\rangle=\overline{\langle y,\ x\rangle}\)   (\(\overline{z}\)は複素共役を表す)
    \((3)\ \langle x\ ,\ x\rangle\geq 0\)かつ,\(\langle x\ ,\ x\rangle=0\Leftrightarrow x=0\)
またこのとき\(X\)を内積空間という.

 

さて,内積にはどことなくノルムに似た性質を持っているのですが,実は内積空間は\(\|x\|=\langle x\ ,\ x\rangle^{\frac{1}{2}}\)と置くことでノルム空間にすることができます.

そのためにひとつだけ補題を用意します.

Lemma1.2(シュワルツの不等式)\(X\)を内積空間とし,\(\langle \cdot\ ,\ \cdot\rangle\)を内積とする.このとき,\[\mid\langle x\ ,\ y\rangle \mid\leq\|x\|\|y\|\]が成り立つ.

proof

証明はそれほど難しくないです.まず,\(\alpha\in\mathbb{C},\ x,\ y\in X\)を任意にとります.このとき,\[0\leq\|\alpha x+y\|^2=\mid\alpha\mid^2\|x\|^2+2\Re(\alpha\langle x\ ,\ y\rangle)+\|y\|^2\](ただし,\(\Re\)は実部を表す.)

となります.元の不等式の左辺が\(0\)の場合は明らかのなので,そうでないとするとき\[\alpha=\frac{\overline{\langle x\ ,\ y\rangle}}{\mid \langle x\ ,\ y\rangle\mid}t\ \ (t\in\mathbb{R})\]とすれば先ほどの式より,

\[\|x\|^2t^2+2\mid \langle x\ ,\ y\rangle\mid+\| y\|^2\geq 0\]となります.よって判別式により結論を得ます. \(\Box\)

これによって,\(\|\cdot\|\)がノルムとなることがわかります.三角不等式以外はわかるので三角不等式を示しましょう.

\(\|x+y\|^2=\langle x+y\ ,\ x+y\rangle=\|x\|^2+\|y\|^2+2\Re(\langle x\ ,\ y\rangle)\leq\|x\|^2+\|y\|^2+2\mid\langle x\ ,\ y\rangle\mid\leq(\|x\|+\|y\|)^2\)

従ってノルムであることがわかります.また,シュワルツの不等式から,内積の連続性を示すことができます.

すなわち,\(\{x_n\}\)を\(\|x_n-x\|\to 0\ (as\ n\to\infty)\)とするとき,任意の\(y\in H\)に対して,\[\mid\langle x_n-x\ ,\ y\rangle\mid\leq \|x_n-x\|\|y\|\to 0\ (as\ n\to\infty)\]がわかります.(これは第二成分についても同様)

さてノルムであることがわかったことによってHilbert空間を定義することができます.

Definition1.3(Hilbert空間)内積空間\(H\)が上のように定義したノルム\(\|\cdot\|\)に関して完備になるとき,\(H\)はHilbert空間(Hilbert space)であるという.

 

上の定義からHilbert空間はBanach空間の一種であることはわかると思いますが,このHilbert空間は非常に綺麗に話がまとまる空間なので非常に重要です.

簡単な例を示しておきましょう

Example1.4
    \((1)\ \mathbb{R}^n\)は標準内積によりHilbert空間になる.
    \((2)\ \ell^2\)は\(x=\{x_n\},\ y=\{y_n\}\)に対し,\[\langle x\ ,\ y\rangle_{\ell^2}=\sum_{n=1}^{\infty}x_n\overline{y_n}\]と定義すると内積となり,この内積に関してHilbert空間になる.

 

(1)は明らかですし,(2)も過去に完備性はやっているのでチェックはそう難しくないと思います.内積にちゃんとなっていることだけチェックすればよいので暇だったらやってみてください.

さて,Hilbert空間の簡単な例は上げましたが,Banach空間だとしてもHilbert空間でないものが存在します.

それではどんなときにBanach空間はHilbert空間になるのでしょうか?それを示すのが次の定理です.

Theorem1.5Banach空間\(X\)がHilbert空間となる必要十分条件は,任意の\(x,\ y\in X\)に対し,\[\|x+y\|^2+\|x-y\|^2=2(\|x\|^2+\|y\|^2)\]が成り立つことである.

 

いわゆる中線定理というやつです.これが成立することがHilbert空間になる必要十分条件になります.

proof

まず\(X\)がHilbert空間であるとします.

このとき,\[\|x+y\|^2+\|x-y\|^2=\|x\|^2+\|y\|^2+2\Re(\langle x\ ,\ y\rangle)+\|x\|^2+\|y\|^2-2\Re(\langle x\ ,\ y\rangle)=2(\|x\|^2+\|y\|^2)\]となり中線定理を満たします.

逆に中線定理が成り立っていると仮定します.このとき\[\langle x\ ,\ y\rangle=\frac{1}{4}(|x+y\|^2-\|x-y\|^2)+\frac{i}{4}(\|x+iy\|^2-\|x-iy\|^2)\]と定義するとこれが内積となります.もちろん\(i\)は虚数単位つまり,\(i^2=-1\)を満たします.

\(x=y\)の時は明らかに\(\|x\|\)に一致するので内積の定義の(3)はよいでしょう.

また(2)についても後ろの2項のノルムの中の\(i\)をくくり出すことでわかります.

従って第一成分に関する線形性を示せれば証明が終わります.さてまず,\(\langle x\ ,\ z\rangle+\langle y\ ,\ z\rangle\)を考えましょう.

\[ \langle x,\ \ z\rangle+\langle y\ ,\ z\rangle=\frac{1}{4}\sum_{k=0}^3i^k(\|x+i^kz\|^2+\|y+i^kz\|^2)\]

となります.本当は\(\sum\)の形で書きたくなかったのですがうまく表示ができませんでした(力不足)

そこは適時脳内補完してもらうとして,中線定理から次のことがわかります.

\[\|x+z\|^2+\|y+z\|^2=\frac{1}{2}(\|x+y+2z\|^2+\|x-y\|^2),\ \|x-z\|^2+\|y-z\|^2=\frac{1}{2}(\|x+y-2z\|^2+\|x-y\|^2)\]

従って,上の\(\sum\)の\(k=0,2\)のときを合わせると,\(1/8(\|x+y+2z\|^2-\|x+y-2z\|^2)\)となることがわかります.

同様に残った項を中線定理で分解してからたし合わせると,\(i/8(\|x+y+2iz\|^2-\|x+y-2iz\|^2)\)となるのでこれと合わせて,

\[\langle x,\ \ z\rangle+\langle y\ ,\ z\rangle=\frac{1}{2}\langle x+y\ ,\ 2z\rangle\]を得ます.さてここで,\(y=0\)とすると,\[\langle x\ ,\ z\rangle=\frac{1}{2}\langle x\ ,\ 2z\rangle\]となりますが,さらにここで,\(x\)を\(x+y\)に書き換えれば

\[\langle x+y\ ,\ z\rangle=\frac{1}{2}\langle x+y\ ,\ 2z\rangle=\langle x,\ \ z\rangle+\langle y\ ,\ z\rangle\]となります.従って,あとは係数が前に出せれば証明が終わるわけですが,上の等式を用いれば有理数までは前に出せることがわかります.

また実数に関しては有理数の稠密性とノルムの連続性により前に出すことができることがわかります.

従って,あとは複素数が前に出せれば証明が終わるのですが,複素数は\(a+ib\)という形をしているので\(i\)さえ前に出せることが分かればよさそうです.

実際計算してみると,\[\langle ix\ ,\ y\rangle=\frac{1}{4}(\|ix+y\|-\|ix-y\|^2)+\frac{i}{4}(\|ix+iy\|^2-\|ix-iy\|^2)\]

なので,\[\|ix+y\|-\|ix-y\|^2=-(\|x+iy\|^2+\|x-iy\|^2),\|ix+iy\|^2-\|ix-iy\|^2=\|x+y\|^2+\|x-y\|^2\]に注意すれば

\[\langle ix\ ,\ y\rangle=i\langle x\ ,\ y\rangle\]であることがわかります.よって内積であることが示されました.\(\Box\)

この中線定理によってHilbert空間になるかどうかをチェックすることができます.

Example1.6\(\ell^1\)はBanach空間であるがHilbert空間でない.

 

\(\ell^p\)において,\(p=3\)の時を考えましょう.念のためノルムは\(x=\{x_n\}\in\ell^3\)に対して,\[\|x\|_{\ell^1}=\sum_{n=1}^{\infty}\mid x_n\mid\]です.

ここで,\(x=(1,\ -1,\ 0,\ \cdots),\ y=(-1,\ 1,\ 0,\ \cdots)\)とします.つまり第3項目からはすべて\(0\)となるような数列二つについて中線定理を考えましょう.

このとき,\(\|x\|_{\ell^1}^2=\|y\|_{\ell^1}^2=2,\ \|x+y\|_{\ell^1}^2=0,\ \|x-y\|_{\ell^1}^2=16\)となるので中線定理は成り立ちません.

従って,\(\ell^1\)はBanach空間ではありますが,Hilbert空間にはなりません.一般に\(p=2\)の時しかHilbert空間にならないことが知られています.(上と同じように証明できます.)

ところで,Banach空間だけども,Hilbert空間にならない例は分かりましたが,内積空間ではあるが,Hilbert空間とならないような空間はあるのでしょうか?

次はその例について少し考えましょう.

Example1.7\(I=[0,\ 1]\)とし,\(C(I)\)を\(I\)上の連続関数全体とする.このとき,\(C(I)\)は標準的な和とスカラー倍によりベクトル空間となる.これに対し,\[\langle u\ ,\ v\rangle=\int_0^1 u(x)\overline{v(x)}\ dx\]と定めると内積となるが,\(\|u\|=\langle u\ ,\ u\rangle^{\frac{1}{2}}\)に関して完備とならない.ここで,上の積分はLebesgue積分を表す.

 

--余談--

この例について話す前に,完備性について少し話しておくと,実はこの空間は\(\sup\)ノルムに関しては完備になります.

ですが,\(\sup\)ノルムには良くないことがあって,近似がうまくできないことです.近似は解析ではよくある手法で,一旦元の関数をよりよい性質の関数列で近似しておいてから元に戻すということをします.

完備であるということは逆に言えば\(\sup\)ノルムでは連続関数よりもゆるい条件の関数は連続関数では近似できないということになってしまいます.

従っていろんな関数を扱う上で\(\sup\)ノルムは都合が悪いのです.こういったところに上のノルム, \(L^2\)ノルムというのですが,これを扱うモチベーションがあるのだと思います.

もちろん,\(C(I)\)では考えている場所が狭すぎて完備とならないわけですが,その穴を補ったのが\(L^2\)空間ということになります.

--閑話休題--

まず,内積となることについて考えましょう.内積の定義の\((1),\ (2)\)は良いと思うので,\((3)\)のみ示しましょう.

非負性はよいので,\(\|u\|=0\)と仮定しましょう.このとき,\(u(x)\neq 0\)なる点があるなら,被積分関数が連続なとき,積分には強単調性があるので,\(\|u\|>0\)となって矛盾します.

(あるいはより一般的な話から連続関数が\(u=0\ a.e\)であるならば\(u\)は真に\(0\)という議論をしても良いと思います.)

従って,\(u=0\)であることがわかります.ゆえに内積となります.

次に完備でないことを示します.\(n\in\mathbb{N}\)に対して,\[f_n(x)=\begin{equation} \left \{ \begin{array}{l} 0\ \ (0\leq x<\frac{1}{2})\\ \sqrt{n}(x-\frac{1}{2}) (\frac{1}{2}\leq x<\frac{1}{2}+\frac{1}{\sqrt{n}})\\ 1\ \ (\frac{1}{2}+\frac{1}{\sqrt{n}}<x\leq 1) \end{array} \right. \end{equation}\]

とおけば,これは連続関数となります.また,\(n\geq m\)とするとき,\[\|f_n-f_m\|^2\leq\frac{2}{3}\frac{1}{\sqrt{n}}+\frac{1}{3\sqrt{m}}\to 0\ (as\ n,\ m\to\infty)\]

となるのでCauchy列となることがわかります.一方で,\[f(x)= \begin{equation} \left \{ \begin{array}{l} 0 (0\leq x\leq\frac{1}{2}) \\ 1 (\frac{1}{2}<x\leq 1) \end{array} \right. \end{equation}\]

に各点収束します.ここで,もし\(f_n\)がある\(I\)上の連続関数\(g\)に\(\|\cdot\|\)に関して収束すると仮定しましょう.

このとき,\(\{f_n\}\)の部分列でほとんどいたるところ\(g\)に各点収束するような部分列\(\{f_{n(k)}\}\)が存在します.

このような部分列の存在は\(L^p\)空間の時に議論することにして話を進めると,元々\(\{f_n\}\)は\(f\)に各点収束してることから,\(f=g\ (a.e.)\)となります.

今,\(g\)の連続性により\[\exists\delta>0;\ \forall x\in [\frac{1}{2}-\delta,\ \frac{1}{2}+\delta],\ \mid g(x)-g(\frac{1}{2})\mid<\frac{1}{2}\]が成り立ちます.

今,\([1/2-\delta,\ 1/2]\)のLebesgue測度は\(0\)でないので,この閉区間内に\(f(x_0)=g(x_0)\)となる\(x_0\)が存在します.

同様に,\((1/2,\ \delta+1/2]\)のLebesgue測度も\(0\)でないのでこの区間内に\(f(x_1)=g(x_1)\)なる\(x_1\)が存在します.

従って,\[1=\mid f(x_0)-f(x_1)\mid \leq \mid f(x_0)-g(\frac{1}{2})\mid +\mid f(x_1)-g(\frac{1}{2})\mid <1\]となり矛盾が生じます.(このあほくさ不等式狂おしいほど好きです)故に\(\{f_n\}\)は\(\|\cdot\|\)に関して連続関数に収束しないことがわかります.

これによって\(C(I)\)内に収束しないCauchy列の存在がわかったので,完備でないことが示されました.\(\Box\)

今回はこれで終わります.もし議論に誤り等ございましたら御手数ですがご指摘願います.

Laplacianの自己共役性の話がしたかった.

ちょっとだけマニアックな話.Laplacianの色々についてです.

まず,Laplacian云々の前にSobolev空間についてだけ簡単に定義しておきましょう.

 

Definition\(\Omega\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域とし,\(u\in L^1_{loc}(\Omega)\)とし,多重指数\(\alpha=(\alpha_1,\ \cdots \alpha_n)\in\mathbb{Z}_+\)とする.このとき,ある\(u_{\alpha}\in L^1_{loc}(\Omega)\)が存在して,\[\int_{\Omega}u(x)\partial^{\alpha}\phi(x)\ dx=(-1)^{\alpha}\int_{\Omega}u_{\alpha}\phi(x)\ dx\ \ (\phi\in C_0^{\infty}(\Omega))\]が成り立つとき,\(u\)は弱微分可能であるといい,\(u_{\alpha}\)を一般化された導関数という.ただし,\[\partial^{\alpha}=\frac{\partial^{\alpha}}{\partial x_1^{\alpha_1}}\cdots \frac{\partial^{\alpha}}{\partial x^{\alpha_n}}\]であって\(C_0^{\infty}(\Omega)=\{\phi\in C^{\infty}(\Omega);\ {\bf supp} \phi\colon {\bf compact}\}\)である.

 

注意として,一般化された導関数は存在すれば一意に定まります.これは変分法の基本原理によって示すことができます:

Theorem(変分法の基本原理)\(\Omega\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域とし,\(u\in L^1_{loc}(\Omega)\)とするとき,\[\int_{\Omega}u(x)\phi(x)\ dx=0\ \ (\phi\in C_0^{\infty}(\Omega))\]ならば\(u(x)=0\ (a.e.)\)である.

 

さて,特に各\(x_i\)に関する弱微分,すなわち\[\int_{\Omega}u(x)\frac{\partial\phi}{\partial x_i}\ dx=-\int_{\Omega}u_i(x)\phi(x)\ dx\]が成り立つとき,通常の導関数と同様に\(\displaystyle u_i=\frac{\partial u}{\partial x_i}\)と表すことにします.

また、\(u\)が通常の意味で微分可能ならば,弱微分可能であって,その導関数は通常の導関数と一致します.

そこで,特に一般化された導関数について次が成り立つような空間を考えます.

Definition(Sobolev Space)\(\Omega\)を\(\mathbb{R}^n\)の領域とし,\(u\in L^p(\Omega)\)が\(\mid \alpha\mid\leq m\)なる任意の多重指数\(\alpha=(\alpha_1,\ \cdots \alpha_n)\in\mathbb{Z}_+\)に対して,一般化された導関数\(u_{\alpha}\)が存在して,\(u_{\alpha}\in L^p(\Omega)\)となるとき,\(u\)は\(L^p\)の意味で\(m\)回微分可能であるといい,そのような\(u\)全体の集合を\(W^{m,\ p}(\Omega)\)で表し,Sobolev空間(Sobolev space)という.

 

さて,Sobolev空間は次のようなノルムに関して完備になります:

Theorem\(W^{m,\ p}(\Omega)\)は\[\|u\|_{m,\ p}=\left(\sum_{\mid\alpha\mid\leq m}\|\partial^{\alpha}u\|_{L^2}^p\right)^{\frac{1}{p}}\]に関して完備である.特にp=2のとき,\[\langle u,\ v\rangle_{m,\ 2}=\sum_{\mid\alpha\mid\leq m}\langle \partial^{\alpha}u,,\ \partial^{\alpha}v\rangle_{L^2}\]を内積としてヒルベルト空間となる.

 

また重要な性質として,\(\Omega=\mathbb{R}^n\)の時,\(C_0^{\infty}(\mathbb{R}^n)\)は上のノルムに関して稠密となります.

これらを踏まえたうえでLaplacianを一般化された導関数の意味で定義します.

Definition\(L^2(\mathbb{R}^n)\)上の一般化された導関数の意味での2階の偏微分作用素\[\displaystyle A_i= \frac{\partial^2}{\partial x_i^2},\ D(A_i)=W^{2,\ 2}(\mathbb{R}^n)\]に対して,\[\Delta=\sum_{i=1}^nA_i=\sum_{i=1}^n\frac{\partial^2}{\partial x_i^2},\ \ D(\Delta)=W^{2,\ 2}(\mathbb{R}^n)\]をLaplacianという.

 

今,\(C_0^{\infty}(\mathbb{R}^n)\subset D(\Delta)\)より,稠密に定義されていることはよいので,共役作用素を考えることができます.

しかし,一般に自己共役性を直接調べるのは結構しんどいです.そこでユニタリー同値という考え方を使って,その困難を回避します.

Theorem\(H\)をヒルベルト空間として,\(H\)上の\(A\)を自己共役作用素とし,\(U\)をユニタリー作用素であるとする.この時,\(A_U=UAU^{-1},\ D(A_U)=UD(A)\)と定義すると,\(A_U\)も自己共役作用素である.

 

上の事実を用いて,Laplacianが自己共役になることを簡単にチェックしましょう.そのためにはユニタリー作用素を用意しなければなりませんが,\(L^2(\mathbb{R}^n)\)上には非常に有名なユニタリー作用素があります.

それはFourier変換です.Fourier変換はプランシュエルの定理によってユニタリー作用素であることがわかります.

Fourier変換には次のような性質がありました:

\[\mathcal{F}\left[\frac{\partial f}{\partial x_i}\right](\xi)=i\xi_i\mathcal{F}[f](\xi),\ \mathcal{F}[x_if](\xi)=i\frac{\partial \mathcal{F}[f]}{\partial \xi_i}(\xi)\]

これによって,

\[\mathcal{F}^{-1}\Delta\mathcal{F}u=-\mid\xi\mid^2 u,\ \mid \xi_i\mid^2=\sum_{i=1}^n\xi_i^2\]となります.

従って,あとは掛け算作用素として,特に\(f(x)=\mid x\mid ^2\)としたとき自己共役になっていればよいことになりますが,掛け算要素の共役作用素は元の関数の共役の掛け算作用素なので,\(f\)が実数値より自己共役作用素となります.

従って,Lapracianは自己共役作用素となります.またユニタリー同値だとスペクトルも一致するので,上の掛け算作用素のスペクトルを調べればLapracianのもわかります.

ところで,Laplacianではマイナスが出てきてしまうので,基本的にはマイナス倍をした\(-\Delta\)を考えることが多いです.

さて,通常のLaplacianは自己共役作用素であることが分かりましたが,作用素は定義域の条件を変えることでその性質も変わります.例えば次のように定義します:

\[A_0=-\frac{d^2}{d x^2},\ D(A_0)=\{u\in W^{2,\ 2}(0,\ 1);\ u^{(k)}(0)=u^{(k)}(1)=0,\ k=0,\ 1\}\]

つまり,この定義域は境界条件として元の関数も導関数も境界ではすべて\(0\)というようにしています.

実はこのように定義すると,自己共役作用素になりません.

これはつまり元の定義域の条件がきつすぎるということになるのですが,其の辺はまた次回お話したいと思います.

ひとくち数学「等周不等式とFourier級数」

 

Fourier級数の数学的な応用例をひとつ.

problem\(D\subset\mathbb{R}^2\)を有界領域とし,曲線\(C\)を\(D\)の境界で\(C\)のパラメータ表示\(c(s)=(x(s),\ y(s))\)が\(C^1級\)かつ\(c'(s)\neq 0\)を満たす単純閉曲線(つまり始点と終点以外交わりがない)とする.このとき,曲線\(C\)の長さを\(L\),領域\(D\)の面積を\(A\),すなわち\[A=\frac{1}{2}\int_{C}-ydx+xdy\]とおくとき,\(L^2\geq 4\pi A\)が成り立つ.また等号が成立するとき,\(D\)は円である.

 

これは等周不等式といって,元々の発端は大昔に,決まった長さの紐で図形を作るとき,面積が一番大きくなる図形はなにか?という問題からです.まぁ答えは円ということですね.

なにやら幾何的な証明もあるようですが,ここではFourier級数という暴力を振るうことで解いてしまおうという話です.

で問題では面倒なので面積を初めから上のように置きましたが,要はグリーンの定理で重積分を線積分に変換してるのでそうなってるということで特に深い意味はありません.

証明の前に曲線\(C\)のパラメータは弧長パラメータ,つまり,\(s\in [0,\ L]\)で\(((x'(s))^2+(y'(s))^2=1\)としてよいことは注意しておきましょう.

またFourier級数にも多少定義にゆれがあるので,ここでは周期\(2\pi\)な関数\(f\)に対して,\[a_n=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\cos nx\ dx,b_n=\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x)\sin nx\ dx\]

としておきます.(一般に周期が\(2\pi\)でなくとも適当な変数変換により周期関数のFourier係数を求めることはできます).これにより,\(f\)のFourier級数は\[f(x)\sim \frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(a_n\cos n\pi x+b_n\sin n\pi x)\]となります.

また周期\(2\pi\)の関数\(f\)が二乗可積分ならばparsevalの等式\[\frac{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi}\mid f(x)\mid\ dx=\frac{\mid a_0\mid ^2}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}(\mid a_n\mid ^2+\mid b_n\mid ^2)\]が成り立ちます.

これらに注意して等周不等式を示します.

さて,まず単純閉曲線なので,各\(x(s),y(s)\)は\[x(0)=x(L),\ y(0)=y(L)\]を満たします.これは周期\(L\)の周期関数なのでFourier級数展開が可能です.

よって\[x(s)=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n\cos\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)+b_n\sin\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)\right)\]

\[y(s)=\frac{c_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}\left(c_n\cos\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)+d_n\sin\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)\right)\]

のように展開されます.ここで\(a_n,c_n\)はそれぞれFourier余弦係数で\(b_n,\ d_n\)はFourier正弦係数です.

Fourier級数の一般論から\(C^1\)級ならば真の意味で等号が成り立つことに注意しましょう.

さて,パラメータの関数\(x(s),\ y(s)\)の微分のFourier級数は等号かどうかわかりませんが

\[x'(s)\sim\frac{2\pi}{L}\sum_{n=1}^{\infty}n\left(b_n\cos\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)-a_n\sin\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)\right)\]

と\[y'(s)\sim\frac{2\pi}{L}\sum_{n=1}^{\infty}n\left(d_n\cos\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)-c_n\sin\left(\frac{2\pi n}{L}s\right)\right)\]

と項別微分をしたようになります.これとParsevalの等式により,

\[L=\int_0^L\ ds=\int_{0}^L(x'(s))^2+(y'(s))^2\ ds\ \ \ \underset{=}{\small parseval}\ \ \frac{L}{2}\left(\frac{2\pi}{L}\right)^2\sum_{n=1}^{\infty}n^2(a_n^2+b_n^2+c_n^2+d_n^2)\]

より,\[L^2=2\pi^2\sum_{n=1}^{\infty}n^2(a_n^2+b_n^2+c_n^2+d_n^2)\]となります.

一方で\(A\)の方を計算すると\[A=\frac{1}{2}\int_0^L-y(s)x'(s)+x(s)y'(s)\ ds=\pi\sum_{n=1}^{\infty}n(a_nd_n-b_nc_n)\]となることがわかります.

あとは簡単で実際に\(L^2-4\pi A\)を計算します.

\[L^2-4\pi A=2\pi^2\sum_{n=1}^{\infty}(n^2(a_n^2+b_n^2+c_n^2+d_n^2)-2n(a_nd_n-b_nc_n))\]

ここで中身に注目すると中身は\[n^2(a_n^2+b_n^2+c_n^2+d_n^2)-n(a_nd_n-b_nc_n)=(n^2-n)(a_n^2+b_n^2+c_n^2+d_n^2)+n((a_n-d_n)^2+(b_n+c_n)^2)\]

となるので,中身が\(0\)以上となり,等周不等式\(L^2\geq 4\pi A\)の成立がわかります.またこれが等号であるとき上の式から

\[a_1=d_1,\ b_1=c_1,\ a_n=b_n=c_n=d_n=0\ (n\geq 2)\]

となるので,\[\left(x(s)-\frac{a_0}{2}\right)^2+\left(y(s)-\frac{c_0}{2}\right)^2=a_1^2+c_1^2\]となって円であることがわかります.

以上がFourier級数を使った証明となりますが,fourier級数は他にも色んな応用があるので調べてみると面白いと思います.

数学以外でも活躍の多いFourier級数・Fourier変換ですが,単純に数学でも応用がたくさんあるのでFourier解析もやってみると面白いかもしれません.