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数学メモ帳

なんかとりあえず数学する

例をあげるだけ

今回は例を上げろと言われたら役に立つかもしれないメモです.

その1 完備でない無限次元ノルムベクトル空間

念のため,ノルム空間等の定義は私の記事

troy-sugaku-t.hatenablog.com

に書いてあります.

まぁ,記事を改めて読み直すほどのものでもないので,さっと定義だけ見てもらえればいいと思います.

ところで,完備でないノルム空間の例ですが,有限次元だと真っ先に\(\mathbb{Q}\)が思いついてしまうので,無限次元で考えることにしましょう.

簡単に思いつくところでは次が挙げられます.

Example\([0,\ 1]\)上の実数値連続関数全体の集合\(C[0,\ 1]\)は\(L^1\)ノルム\(\|\cdot\|_1\)に関して,ノルムベクトル空間となるが,完備でない. ただし,\(L^1\)ノルムとは,関数\(f\)に対し,\[ \|f\|_1=\int_0^1\mid f(x)\mid\ dx\]である.(ただし,この積分はLebesgue積分である.)

 

ノルムベクトル空間になることは良いので,完備でないことを示しましょう.

具体的に言うと,Cauchy列であるが,\(L^1\)ノルムに関して収束列とならないような関数列をとってくれば良いわけですが,次のように定めます:

\[\begin{equation} \forall n\in\mathbb{N},\ f_n(x)= \left \{ \ \begin{array}{l} 0  \Bigl(0\leq x\leq \frac{1}{2}\Bigr) \\ \\ n\Bigl(x-\frac{1}{2}\Bigr)\hspace{20mm}\Bigl(\frac{1}{2}\leq x\leq \frac{1}{2}+\frac{1}{n}\Bigr)\\ \\ 1 \Bigl(\frac{1}{2}+\frac{1}{n}\leq x\leq 1\Bigr) \end{array} \right. \end{equation}\]

と定めると,\(f_n\in C[0,\ 1]\)です.

また,\[\| f_n-f_m\|_1=\int_{0}^{1}\mid f_n(x)-f_m(x)\mid\ dx=\frac{1}{2}\Bigl(\frac{1}{m}-\frac{1}{n}\Bigr)\to 0\ (as\ n\to\infty)\]より,\(\{f_n\}_{n=1}^{\infty}\)は\(c[0,\ 1]\)上のCauchy列です.

さてここで,\(f_n\)は各\(x\in [0,\ 1]\)に対して,\[\begin{equation} \lim_{n\to\infty}f_n(x)=f(x)=\left\{\ \begin{array}{l} \frac{1}{2}\hspace{19mm}\Bigl(0\leq x\leq \frac{1}{2}\Bigr) \\ \\ 1\hspace{20mm}\Bigl(\frac{1}{2}<x\leq 1\Bigr) \end{array} \right. \end{equation}\]となります.

このとき,Lebesgueの有界収束定理より,\(\|f_n-f\|_1\to 0\ (as\ n\to\infty)\)ですが,\(f\not\in C[0,\ 1]\)ですので,\(\{f_n\}_{n=1}^{\infty}\)は収束列とはなりません.

よって,完備でないことが示されました.

この結果が示すことは,結局\(C[0,\ 1]\)は考える範囲が狭すぎて収束しないものができてしまうということです.まぁそうじゃないのが完備なので当たり前ですが.

最後に例の中で使ったLebesgueの有界収束定理を念のため書いておきましょう.

Theorem(Lebesgueの有界収束定理)測度空間を\((\Omega,\mathcal{B},\mu)\)とし,\(E\in\mathcal{B}\)かつ,\(\mu(E)<+\infty\)なる\(E\)上の\(\mathcal{B}\)-可測関数の列\(\{f_n\}_{n=1}^{\infty}\)が一様有界かつ,ある関数\(f\)にほとんどいたるところ収束するならば,\(f_n,f\)は共に\(E\)上積分可能であって,\[\lim_{n\to\infty}\int_E f_n(x)\ d\mu(x)=\int_E f(x)\ d\mu(x)\]が成り立つ.

 

先ほどの場合,各\(f_n,f\)は明らかに\(1\)以下なので,一様有界であって,各点収束しているので定理の主張を満たします.なお連続関数ならば,Lebesgue可測関数です.(通常の意味の積分でも連続関数は積分可能なわけなので,そうじゃないと困るわけですが.)

さて,Lebesgue積分論でぶん殴ってスッキリしたところで次に行きましょう.

その2  有界閉集合だけどコンパクトでない

これは簡単な議論でできます.

\(\ell^p\)空間の\(p=2\)で考えましょう.\(\ell^p\)については上にあげた記事の1に書いてあります.

Example\(\ell^2\)の部分集合\[B=\{x=\{x_i\}_{i=1}^{\infty}\in\ell^2\ ;\ \|x\|_{\ell^2}\leq1\}\]は有開閉集合であるが,コンパクト集合でない.

これが有開閉集合であることはよいでしょう.

ところが,任意の\(n\in\mathbb{N}\)に対し,\[\begin{equation} d_n^{(i)}= \left \{ \begin{array}{l} 1 (i=n) \\ 0 (i\neq n) \end{array} \right. \end{equation}\]

と定めると,\(d_n=\{d_n^{(i)}\}_{i=1}^{\infty}\in B\)より,\(\{d_n\}_{n=1}^{\infty}\)は\(B\)内の点列ですが,

\(n\neq m\)となる任意の自然数\(n,m\)に対し,\(\|d_n-d_m\|_{\ell^2}=\sqrt{2}\)なので,どのように部分列をとってもCauchy列でないことがわかります.

今,\(\ell^2\)は完備なので,Cauchy列は収束列ゆえ,\(\{d_n\}_{n=1}^{\infty}\)は収束部分列を持たないことがわかり,これはコンパクトでないことがわかります.

という感じで,割と簡単に示せました.なお最後の結論は点列コンパクト性とコンパクト性が同値であることがありますが,それはよくご存知でしょう.

最後にもう一つ書いて終わりにしましょう.

その3 可分でないノルム空間

これは次のようにします.

Example\(\mathbb{R}\)上の有界関数全体の集合\(L^{\infty}(\mathbb{R})\)は\(\sup\)ノルム\(\|\cdot\|_{\infty}\)に関して可分でない.ただし,\[ \|f\|_{\infty}=\sup_{x\in\mathbb{R}}\mid f(x)\mid \]である.

 

まず任意の\(s\in\mathbb{R}\)に対し,\(f_s(x)=I_{(-\infty,\ s)}(x)\)と定めます.ただし,\(I_A(x)\)は\(A\subset\mathbb{R}\)の定義関数(特性関数)を表します.

ここから,可分でないことを背理法を用いて示します.すなわち,可分であると仮定します.

可分であるとは,可算な稠密部分集合が存在することだったので,それを\(\{x_n\}_{n=1}^{\infty}\)とおきます.

このとき,\(s\neq t\)なる実数\(s,t\)で,\[\| f_s-x_k\|_{\infty},\ \|f_t-x_k\|<\frac{1}{4}\]なる自然数\(k\)が存在するようなものがあります.

もしこのような\(s,t\)が存在しないならば,\(\mathbb{R}\)から\(\mathbb{N}\)への単写が作れることになり矛盾が生じるからです.

ところが,\(s\neq t\)ならば,\(\|f_s-f_t\|_{\infty}=1\)であるが,三角不等式から,\[\|f_s-f_t\|_{\infty}\leq \|f_s-x_k\|_{\infty}+\|f_t-x_k\|_{\infty}<\frac{1}{2}\]となり矛盾します.

よって,背理法により,可分でないことが示されました.

ということで,詰め合わせでした.以上で終わります.

間違い等ございましたらコメントかTwitterにて指摘をしてくださると幸いです.

ひとくち数学「Γ関数は階乗の拡張?」

Γ関数

以下適当に複素解析の基本的な話は既知として話を進めます.

まずはとりあえず定義からいきましょう.

Definition(\(\Gamma\)関数)\(s\in\mathbb{C}\)として,\(\Re (s)>0\)とするとき,\[\Gamma(s)=\int_{0}^{\infty}t^{s-1}e^{-t}\ dt\] と定義する.


proof

まずこの広義積分が収束しているのか問題は一応ありますが,定義の範囲で絶対収束して正則な関数になっています.

次の命題は証明はしませんが,\(\Gamma\)関数の基本的な性質です.

proposition(\(\Gamma\)関数の性質)\(s\in\mathbb{C}\)として,\(\Re (s)>0\)とするとき,\[\Gamma(s+1)=s\Gamma(s)\] が成り立つ.

 

上の性質より特に,\(n\in\mathbb{N}\)のとき,\(\Gamma(n+1)=n!\)が成り立ちます.すなわち階乗の拡張だと言えます.

しかし,このような性質を満たす関数はまだほかに存在する可能性を残しているのでこのままでは真の意味で拡張とは言えません.

さて,其の辺はどうなっているのか?というのはとりあえず置いといて,上の命題からさらに次がわかります.

proposition(\(\Gamma\)関数の拡張)\(S=\{0,-1,-2,\cdots \}\)とするとき,\(\Gamma\)関数は\(\mathbb{C}\setminus S\)上で正則な関数に拡張され,\(S\)の任意の点を\(1\)の極にもち,その留数は\[{\rm Res}[\Gamma(s),-n]=\frac{(-1)^n}{n!}\]である.

proof

証明というほどでもないですが,\(\Gamma\)関数は前の命題より,\[\Gamma(s)=\frac{\Gamma(s+n+1)}{s(s+1)\cdots (s+n)}\ (\Re (s)>-n-1)\]という表記が任意の\(n\in\mathbb{N}\)に対し得られます.

従って,前半の主張はわかったので,次は留数ですが,\[{\rm Res}[\Gamma(s),-n]=\lim_{s\to -n}(s+n) \Gamma(s)=\lim_{s\to -n}\frac{\Gamma(s+n+1)}{s(s+1)\cdots (s+n-1)}=\frac{(-1)^n}{n!}\]となって証明が終わります. \(\Box\)

という事で,これによっていい感じの表記が得られたのでめでたしめでたしというわけですが,ここで,さらに次の定理が成り立ちます.

Theorem\(D\subset\mathbb{C}\)を領域,複素関数\(f(s)\)は\(D\)上で正則であるとし,また次の条件が成り立つとする:
    \( (1)\ V=\{s\ ;\ 1\leq\Re (s)< 2\}\subset D\)
    \((2)\ f(z)\colon\ V\)で有界.
    \((3)\ f(s+1)=sf(s)\).

このとき,\(f(s)=f(1)\Gamma(s)\)である.

proof

まず,\((3)\)の性質より,関数\(f(s)\)は\(\mathbb{C}\setminus S\)上の正則関数に拡張され,その留数は\[{\rm Res}[f(s),-n]=f(1)\frac{(-1)^n}{n!}\]です.

従って,関数\(g(s)\)を\(g(s)=f(s)-f(1)\Gamma(s)\)は\(\mathbb{C}\)上の整関数です.

これより,\(h(s)=g(s)g(1-s)\)と定義すると,整関数かつ,\(\{s\ ;0<\Re(s)\leq 1\}\)上有界です. ((1),(2)の条件より.)

また,\[h(s+1)=g(s+1)g(-s)=sg(s)\frac{g(-s)}{-s}=-h(s)\]より,任意の\(n\in\mathbb{N}\)に対し,\(\{s;\ n\leq \Re(s)<n+1\}\)で有界ですので,\(h(s)\)は\(\mathbb{C}\)上有界な関数になります.

従って,Liouvilleの定理から,有界な整関数は定数関数に限るので,\[h(s)=h(0)=g(0)g(1)=0\]より結論を得ます. \(\Box\)

以上より少し範囲は狭いですが,\(\Gamma\)関数と似たような性質を持つ関数はすべて\(\Gamma\)関数の定数倍だと分かってしまいました.

従って,\(\Gamma\)関数には,無限積表示,\[\frac{1}{\Gamma((s)}=se^{\gamma s}\prod_{n=1}^{\infty}\Bigl(1+\frac{s}{n}\Bigr)e^{-\frac{s}{n}}\]

※ただし,\(\gamma=\lim_{n\to\infty}\Bigl(\sum_{k=1}^n\frac{1}{n}-\log n\Bigr)\)

がありますが,これを簡単に示すことができます.

なぜなら,上の表記を右辺の逆数をとった関数を上の定理に適用できるからです.

なお右辺が整関数であることについては,無限積の一般論により,無限級数の収束に置き直すことで簡単に示せます.

上の表記が良いところは,無限積の零点が丁度\(S\)の点であり,ここからも\(\Gamma\)関数の極が\(S\)上にしかなく,それ以外の点では非零であることも明らかなところですね.

という感じで,ちょっとだけ\(\Gamma\)関数について触れてみました.以上で話を終わります.

間違い等ございましたらコメントかTwitterにて指摘していただけると幸いです.

ひとくち数学「Rouchéの定理による代数学の基本定理」

今回はタイトルのとおりみんな大好き代数学の基本定理です.

なお今回は複素解析の基本的な知識(極とか複素積分とかその辺)に関しては知ってるものとして話を進めます.

まずひとつ定義から始めましょう.

Definition(有理型)複素関数\(f(z)\)が領域\(D\)で有理型であるとは\(D\)で除去可能特異点か極しか持たないことをいう.


proof

これを頭に入れた上で次が成り立ちます.

Theorem(Rouché's theorem)\(C\)を単純閉曲線とし,\(D\)をその内部とし,\(D\)の閉包\(\overline{D}\)で複素関数\(f(z),g(z)\)は有理型かつ,\(C\)上に極も零点ももたないとする. このとき,任意の\(z\in C\)に対し,\(\mid f(z)\mid >\mid g(z)\mid\)が成り立つならば,\(N_{f+g}=N_f\)が成り立つ. (ただし,\(N_f\)は\(f\)の重複度を含めた\(D\)内に含まれる零点の個数を表す.)

上の定理が今回の主役のRouchéの定理です.本当はもうちょっと一般化できますが,今回はこれで十分なのでいいでしょう.一件使い道がわからない定理ですが,解の個数を調べるのに非常に便利です.

例えば,\(C\)を単位円の円周として,\(f(z)=4z^3,\ g(z)=z^7+z-1\)とすると,\(\mid z\mid =1\)ならば,\[\mid g(z)\mid\leq \mid z\mid ^7+\mid z\mid +1=3<4=4\mid z\mid^3=\mid f(z)\mid\] となるので,\(f(z)\)が\(0\)を重複度\(3\)の零点を持つので,\(z^7+4z^3+z-1=0\)は\(\mid z\mid <1\)で3つの解を持つことがわかります.

これをより一般化して次が成り立ちます:

Theorem(代数学の基本定理)\(p(z)\)を\[p(z)=z^n+a_{n-1}z^{n-1}+\cdots a_1z+a_0\ (a_i\in\mathbb{C})\] とするとき,\(p(z)\)は重複度を含め,\(n\)個の解をもつ.

proof

証明は非常に簡単です.

\(f(z)=z^n,\ g(z)=p(z)-f(z)\)と定義します.このとき,\(\mid z\mid >1\)ならば,\[\mid g(z)\mid\leq \mid a_{n-1}\mid\mid z\mid^{n-1}+\cdots +\mid a_1\mid\mid z\mid +\mid a_0\mid \leq nM\mid z\mid^{n-1}\ (M=\max_{1\leq k\leq n}\mid a_k\mid)\]

となります.よって,正の数\(R>0\)を\(R>\max\{1,\ nM\}\)となるように取ると,\(\mid z\mid >R\)ならば,\[\frac{\mid g(z)\mid }{\mid f(z)\mid}<\frac{nM}{R}<1\]が成り立ちます.

となって,これは\(\mid f(z)\mid>\mid g(z)\mid\)を意味し,\(f(z)\)は半径\(R\)の円盤の外で零点を持たないのでRouchéの定理より,\(p(z)\)も外側では零点持ちません.

その一方で,\(f(z)\)明らかに半径\(R\)の円盤内で零点を重複度を込めて丁度\(n\)個持つので,再びRouchéの定理より,\(p(z)\)は円盤内に\(n\)個の零点を持つことになってこれは結論を意味します. \(\Box\)

Liouvilleの定理を使って楽に証明できる代数学の基本定理ですが,Rouchéの定理での証明はあまりなかった?(一応wikipediaには載ってました)ぽいのでやってみました.

以上で終わります.読んでいただきありがとうございました.

間違い等ございましたらコメントかTwitterで指摘していただけると幸いです.

なんか適当に数学する5

\(\ell^p\)の可分性

今回は\(\ell^p\)の可分性について軽く触れたいと思います.その前に定義を書きます.

Definition(Dense)\(V\)をベクトル空間とし,\(\|\cdot\|\)をV上のノルムとするとき,\(A\subset V\)が\(\|\cdot\|\)に関して稠密(Dence)であるとは,\[\forall x\in V,\ \exists\{x_n\}_{n=1}^{\infty}\subset A;\ \|x-x_n\|\to 0\ (as\ n\to \infty)\]となることをいう.

 

Definition(Separatable)ノルムベクトル空間\(V\)が可分(Separatable)であるとは,\(V\)上のノルムに関して稠密な可算部分集合が存在することをいう.

 

可分であるというのは上のように定義されますが,なぜ可分が重要であるかというと,\(\ell^2\)空間,つまり,\(p=2\)のとき,ヒルベルト空間(内積から定まるノルムに関して完備な空間)に実はなります.

そして,ヒルベルト空間において,完全正規直交系が取れることは保証されているのですが,それが可算個取れるかどうかというのは実はわからなくて,もし空間が可分であればそれが可算個で取れることが保証されます.

なので,可分性は割と大事なのですが,まぁ実は\(\ell^2\)の場合は具体的に超簡単に取れるので実はそんなに大したことはないんですけどね!

まぁとにかく可分性があるとちょっといいことがあるってことです.では証明ですが,次の事実を用います:

Lemma\(V\)をノルムベクトル空間として\(\|\cdot\|\)をそのノルムとし,\(D,\ F\)を\(V\)の部分空間かつ\(D\subset F\)とする.

この時,\(D\)が\(F\)で\(\|\cdot\|\)に関して稠密であって,\(F\)が\(V\)に\(\|\cdot\|\)に関して稠密ならば,\(D\)も\(V\)で\(\|\cdot\|\)に関して稠密である.

 

これは稠密性の定義を2回つかって三角不等式で押さえればできるので省略します.

では\(1\leq p<\infty\)のときの\(\ell^p\)の可分性を示しましょう.

step1 \(S=\{\{x_i\}_{i=1}^{\infty}\in\ell^p\mid 有限個のiを除き,x_i=0\}\) は\(\ell^p\)で稠密.

上で定義された集合\(S\)が稠密であること示します.

今,任意に\(x=\{x_i\}_{i=1}^{\infty}\in\ell^p\)をとります.このとき,各\(j\in\mathbb{N}\)に対し,

\[r_j=(x_1,\ x_2\cdots x_j,\ 0,\ 0\cdots)\] と定義すると,各\(j\)について明らかに\(\|r_j\|<\infty\)より,\(r_j\in\ell^p\)ですから,\(r_j\in S\)です.

今,\[\|x-r_j\|_{\ell^p}^p=\sum_{i=j+1}^{\infty}\mid x_i\mid^p\to 0\ (as\ j\to \infty)\] です.上の事実は,無限和が収束するので,\(\{\sum_{i=1}^N\mid x_i\mid^p\}_{N=1}^{\infty}\)がCauchy列であることからわかります.

以上より,\(S\)が\(\ell^p\)で稠密であることが示されました.

Step2 \(Q=\{\{q_i\}_{i=1}^{\infty}\mid 有限個を除き,q_i=0かつ,\forall i\in\mathbb{N},q_i\in\mathbb{Q}\}\)は\(S\)で稠密.

\(S\)の元\(r=\{r_i\}_{i=1}^{\infty}\)を任意にとります.ここで,\(r_i\neq 0\)となる\(i\)に対し,\(r_i\)は実数であるとしても一般性は失われません.

従って,実数のなので,有理数の稠密性から,各\(i\)に対して,\(q_j^{(j)}\to r_j\ (as\ j\to\infty)\)となる有理数列\(\{q_i^{(j)}\}_{j=1}^{\infty}\)が存在します.

よって,各\(j\)に対して,\(q_j=(q_1^{(j)},q_2^{(j)}\cdots)\)(ただし,\(r_i=0\)なる\(i\)については\(q_i^{(j)}=0\))と定義すれば,Step1と同様に明らかに\(q_j\in\ell^p\)であって,

\[\|r-q_j\|_{\ell^p}^p=\sum_{r_i\neq 0}\mid r_i- q_i^{(j)}\mid^p\to 0\ (as\ j\to \infty)\]

となるので,これは\(Q\)が\(S\)で稠密であることを意味します.また,\(Q\)は定義から明らかに可算集合ゆえ,Lemmaから\(\ell^p\)は可分であることがわかります. \(\Box\)

最後駆け足になりましたが,やってることは単純なので多分大丈夫だと思います.

ところで,実は可分な複素ヒルベルト空間で完全正規直交系の個数が加算無限個なものはヒルベルト空間の意味で\(\ell^2\)と同型になります.

時間があったら其の辺も紹介したかったのですが,ちょっと色々とめんどくさいのでこのへんで\(\ell^p\)の話は一旦終わりにして,次回はまた別の話を適当にしようかなと思います.

ということで,ここまで読んでいただきありがとうございました.

間違い等ございましたらコメントかTwitterにて指摘してくださると幸いです.

何か適当に数学する4

\(\ell^p\)の完備性

今回は,\(\ell^p\)の完備性について触れたいのですが,その前に今更ですが復習も兼ねて色々と基本事項を確認しましょう.

Definition(Vector Space) \(V\)がベクトル空間(Vector Space)であるとは,\(V\)上で定義された加法に関してアーベル群であって, スカラー倍\(\cdot\colon \mathbb{C}\ \)(または\(\mathbb{R})\times V \to V\)に対して,以下の(1)から(4)が成り立つことを言う:
    \(k,\ l\in\mathbb{C} \)(または\(\mathbb{R}),\ u,v\in V\)に対して,
    \((1)\ k\cdot (u+v)=k\cdot u+k\cdot v\)
    \((2)\ (k+l)\cdot v=k\cdot v+l\cdot v\)
    \((3)\ (kl)\cdot v=k\cdot (l\cdot v)\)
    \((4)\ 1\cdot v=v\)

 

上では\(\cdot\)で書きましたが,省略することが多いです.また,スカラー倍が\(\mathbb{C}や\mathbb{R}\)でなく通常の体でも構いません.

また前回軽く述べましたが,\(\ell ^p\)は\(x=\{x_i\}_{i=1}^{\infty},\ y=\{y_i\}_{i=1}^{\infty}\in\ell^p,\ k\in\mathbb{C}\)に対して,

    和\(\colon x+y=\{x_i+y_i\}_{i=1}^{\infty}\)
    スカラー倍\(\colon kx=\{kx_i\}_{i=1}^{\infty}\)

と定義すると,Minkowskiの不等式の時述べたように,きちんと和に関して閉じていて,スカラー倍も明らかに閉じているので,ベクトル空間となります.

次にノルムの定義についてです.

Definition(norm) \(V\)をベクトル空間とするとき,関数\(\|\cdot\|\colon V\times V\to\mathbb{R}\)がV上のノルム(norm)であるとは,以下の(1)から(4)が成り立つことを言う:
    \(k\in\mathbb{C} \)(または\(\mathbb{R}),\ u,v\in V\)に対して,
    \((1)\ \|v\|\geq 0\)
    \((2)\ \|v\|=0\Leftrightarrow v=0\)
    \((3)\ \|kv\|=\mid k\mid \|v\|\)
    \((4)\ \| u+v\|\leq \|u\|+\|v\|\)
また,ノルムが定義されたベクトル空間をノルムベクトル空間(normed vector space)という.


上の定義を見れば,こないだ定義した\(\ell^p\)-ノルムはきちんと\(\ell^p\)上のノルムになっていることがわかりますね.(三角不等式はMinkowskiの不等式そのものですし.)

形を見ると,絶対値の一般化みたいになっているのがわかるので,実数体のときと同様にCauchy列や収束列の定義がノルムベクトル空間ではできます.

従って,当然完備性を定義することができます.

Definition(Complete) ベクトル空間\(V\)がV上のノルム\(\|\cdot\|\)に関して完備(Complete)であるとは, \(\|\cdot\|\)に関しての任意のCauchy列が,収束列となることをいう.

 

Completeと聞くと何が完全なのかがよくわかりづらいですが,どちらかというとたっぷり詰まってるとか,満タンな状態と言ったほうが近いかもしれません.

とりあえず,基本事項は多分これだけで十分だと思いますので,いよいよ\(\ell^p\)の完備性を示していきましょう.

Theorem(\(\ell^p\)の完備性) \(1\leq p<\infty\)のとき,\(\ell^p\)は\(\ell^p\)-ノルム\(\|\cdot\|_{\ell^p}\)に関して完備である.

proof

証明ですが,Cauchy列を取らないと始まらないので,\(\ell^p\)上のCauchy列を\(\{x_n\}_{n=1}^{\infty}\)とします.

なぜわざわざ強調したかというと,これは初めてやる人にとっては非常に混乱の元だからです.\(\ell^p\)上のCauchy列ということは,列の項ひとつひとつが数列なんです.

だから第\(n\)項目\(x_n\)を取り出してみるとコイツ自身が数列なので,ちゃんと書くなら\(x_n=\{x_i^{(n)}\}_{i=1}^{\infty}\)という感じになっているわけですが,これではあまりにもややこしいので,

各\(n\in\mathbb{N}\)に対して,数列\(x_n\)の項は通常のベクトルと同じように,\(x_n=(x_1^{(n)},x_2^{(n)},\cdots )\)と書く事にして,

例えば\(x_n\)の1番目の項のことを\(n\)番目の第\(1\)成分ということにすれば,ごちゃつかないと思うのでそれでいきましょう.

さて,長々と注意したところで,まずCauchy列の定義から,

\[\forall\varepsilon>0,\ \exists N\in\mathbb{N};\ \forall n,m\geq N\Rightarrow\|x_n-x_m\|_{\ell^p}<\varepsilon\] が成り立ちます.

ここで,\(j\in\mathbb{N}\)をひとつ固定します.このとき,上のことから次が成り立ちます: \[n,m\geq N\Rightarrow \mid x_j^{(n)}-x_j^{(m)}\mid=\Bigl(\mid x_j^{(n)}-x_j^{(m)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\leq\Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i^{(n)}-x_i^{(m)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}=\|x_n-x_m\|_{\ell^p}<\varepsilon\]

これは何を意味するかというと,ある番号\(N\)より先の\(n\)番目の第\(j\)成分と,\(m\)番目の第\(j\)成分の差が,任意の正の数\(\varepsilon\)で抑えられるということなのでつまり,\(\{x_j^{(n)}\}_{n=1}^{\infty}\)は\(\mathbb{C}\)上のCauchy列であるということになります.

大事なのは\(\mathbb{C}\)上のというところで,なぜならば,\(\mathbb{C}\)は完備なので,上の列,すなわち,1番目,2番目・・・とすべての列の第\(j\)成分を集めてきて並べた数列は収束列になります.

従って,各\(j\in\mathbb{N}\)に対して,ある\(x_j\in\mathbb{C}\)が存在して,\(x_j^{(n)}\to x_j\ (as\ n\to\infty)\)となります.

よって,これらをすべて1から並べたものを,\(x=(x_1,\ x_2\cdots )\)とします.実はこいつが最初にとったCauchy列の収束先になります.次はそれを示します.

step1:\(\|x-x_n\|_{\ell^p}\to 0\ (as\ n\to \infty)\)

まず,\(x_n\)が\(x\)に\(\|\cdot\|_{\ell^p}\)に関して,収束することを示します. 今,任意の\(k\in\mathbb{N}\)に対して,\[S_n(k)=\Bigl(\sum_{i=1}^{k}\mid x_i-x_i^{(n)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\] と置き,\(n\geq N\)となるように任意に固定するとき, \[\Bigl(\sum_{i=1}^{k}\mid x_i^{(m)}-x_i^{(n)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\to S_n(k)\ (as\ m\to\infty)\]

となるから,\[\Bigl(\sum_{i=1}^{k}\mid x_i^{(m)}-x_i^{(n)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\leq\|x_m-x_n\|<\varepsilon\ (n,m\geq N)\] に注意すれば,任意の\(n\geq N\)に対し, \[s_n(k)\leq\varepsilon\] が成り立って.さらに,\(s_n(k)\leq s_n(k+1)\)より,\(k\)に関して,単調増加かつ,上に有界であるから,\(k\to\infty\)としたときに収束するので,上の関係式から, \[s_n(k)\to \Bigl(\sum_{i=1}^{\infty}\mid x_i-x_i^{(n)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}=\|x-x_n\|_{\ell^p}\leq\varepsilon\] となって,これは\(\|x-x_n\|_{\ell^p}\to 0\ (as\ n\to \infty)\)を意味します.

step2:\(x\in\ell^p\)

上のことで多方話は終わったのですが,最後に\(x\in\ell^p\)を示す必要があります.ですがこれは簡単で,任意の\(k\in\mathbb{N}\)に対して,

\[\Bigl(\sum_{i=1}^{k}\mid x_i\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\leq \Bigl(\sum_{i=1}^{k}\mid x_i-x_i^{(n)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}+\Bigl(\sum_{i=1}^{k}\mid x_i^{(n)}\mid^p\Bigr)^{\frac{1}{p}}\] がMinkowskiの不等式より成り立つので,両辺を\(k\to\infty\)とすれば, \[\|x\|_{\ell^p}\leq\|x-x_n\|_{\ell^p}+\|x_n\|_{\ell^p}<\infty\] となるので,以上より,\(x\in\ell^p\)がわかったので,\(\ell^p\)の完備性が示されたことになります. \(\Box\)

以上で,完備性については終わります.で,なんでこいつの話をしたかって言うと,コイツ自身も割とよく出てくるし大事ってのもあるんですが,本当は\(L^p\)をやろうと思ってたんですけど,測度の話をしていいのかよくわからなかったのでこれにしたというのが本音です.

次回は,せっかくなので\(\ell^p\)の可分性にでも触れようかなと思います.それではここまで読んでいただきありがとうございました.

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